劇場公開日 2020年6月5日

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「まさに今、2020年の映画」ルース・エドガー 栗村成子さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5まさに今、2020年の映画

2020年6月17日
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「オバマ後」のアメリカ、現代の人種差別を描いた作品として非常に秀逸。一見平等に機会が与えられているようで、黒人が常に向けられる疑いの目。危険性があれば排除され、完璧でなければ「怪物」になってしまう…。「息ができない」というセリフはあまりにタイムリーですね。
作中、ルースの本心は殆どわからず、観客からすればまさに「聖人」か「怪物」か判断できず、「黒人」「優等生」「ティーンの男の子」という社会的役割に当てはめられない人間の多層性に翻弄されることになります。もちろん、1人の人間が「聖人」であることも「怪物」であることも本当はあり得ないんですが。
ルースに疑いの眼差しを向けこの物語の火種となる、黒人フェミニスト教師のハリエットも大変多面的で素晴らしいキャラクター。やっと、白人を助けたり、ひたすら性格が良かったり、かわいそうだったりする役割ではない、マイノリティの中の多様性が描かれるようになってきたということではないでしょうか。日本ではまだここまでマイノリティの多面性を描くことはできないように思います(文化と文化を単純に比べることは出来ませんが)。
終始ハラハラし、物語の展開が読めない人間サスペンスでとても面白かったです!監督を追ってみようかな。

しゃんしゃん