劇場公開日 2020年9月11日

「劇場用に磨き上げた音響に身体が包まれる感覚を味わうためなら、パンフレットの価格など!(うぅっ…)」荒野のコトブキ飛行隊 完全版 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0劇場用に磨き上げた音響に身体が包まれる感覚を味わうためなら、パンフレットの価格など!(うぅっ…)

2020年9月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

オリジナルテレビアニメーション版を全く知らないまま、『ミッドウェイ』の翌日に本作を観て仰天した観客による感想です。

 冒頭に声優さん二人の掛け合い映像があり、そのノリについていけなくて「観る作品間違ったかな…」と不安になったものの、本編が始まるとそんな懸念もどこへやら、『ミッドウェイ』にひけをとらない、というか、場合によってはそれを上回るような空戦の描写や音響へのこだわりに、ひたすら感動。細部へのこだわりの点で比較すべきは、エメリッヒ監督、というよりもノーラン監督かも。

確かに序盤における、舞台となる世界の説明や、主人公達がコトブキ飛行隊を結成する過程に関しては、詰め込みすぎの感がなくもなかったけど、それも限られた時間枠を空戦描写に割くため、という苦心の結果と思うと、全然問題なし。むしろテレビアニメの時点でこれだけの映像を作り上げていたのか、と思うと驚かざるを得ません。

劇場版では、特に音作りに細心の注意を払った、とパンフレットに記載があったけど、機銃掃射の炸裂音、爆発音、そして機体のきしみ音に身体が包まれるような感覚は素晴らしい。

ただ、世界観の設定上やむを得ないところではありますが、彼らが行っているのは間違いなく実弾を使った命のやり取り(見方によってはコトブキ飛行隊は大変な数のパイロットを殺害している)であるにも関わらず、言動が非常に軽く、戦場の残酷さ、生々しさについてはほとん描かれません。コトブキ飛行隊の彼女らがどんな派手な墜落をしても、せいぜいかすり傷程度の負傷しかしない点も、この生々しさの低減に寄与しています。この点にちょっと違和感を感じる人もいるでしょう(劇中のセリフはしばしば、彼らもまた命がけであることを示唆しているのですが)。

異様に機体描写に執着する割に機銃の弾数や燃料はどうなの?とか思う部分もなくもありませんが、この虚実の入り交じり方を受け容れる事ができれば、存分に映像と音響美を楽しむことができるでしょう。一観客としては、劇場版が初見だったために、あらゆる部分に初回ならではの驚きがあり、本当に映画館の大スクリーンと音響で鑑賞できて良かったと思える作品でした。

 水島監督には、今後ぜひとも『エリア88』を再映画化していただきたい!(女性キャラクターの描写や衣裳デザインが変わってもいいから!)

 パンフレットは前述の音響描写に関するインタビューも含めて情報量が多く、おまけもあって嬉しいけど、作品一本分に近い値段に驚愕…。こちらはもう少し安くして!お願い!

yui
yuiさんのコメント
2020年9月13日

すごく良い情報をありがとうございます!
なるほど、いろんな映画ジャンルのオマージュが含まれているとは思いましたが、マカロニ・ウェスタンとは気が付きませんでした!(岡本喜八オマージュかとも思ってました)
それにしても、超絶リアルな描写とフィクショナルな設定の配分が面白い作品でした。戦闘のルールも目から鱗でした。再見がますます楽しみになりました!

yui
2020年9月13日

コトブキのメンバーが発言が軽いのは、マカロニのオマージュと彼女たちがプロの用心棒だからです。
キリエなんかは自分の命に対しても凄く軽く考えてます。キリエやチカ辺りは本当に社会の底辺に居たのでその辺りもあると思います。
あと、この世界では基本的にコクピットは狙わないのは暗黙のルールのようで相手が空賊でも殺しにはいかないですね。なので上手いと生還するし下手くそだとそのまま墜落して死んでしまいます。(ナサリンは6人居ましたが、少なくとも2人は初戦で落ちたようです)
長文失礼しました。

澤木正克(アンギラズ)