「ハートフル・ファンタジー」宇宙でいちばんあかるい屋根 森のエテコウさんの映画レビュー(感想・評価)
ハートフル・ファンタジー
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ゆったりとした映像の中で繰り広げられるお芝居を楽しむ作品。
特に、つばめと星ばあとママの三人の女性の涙のシーンは、それぞれがこの映画の見せ場だ。
観るものは、三様の背景を想って、否応なしに共感の涙を誘われる。
きら星の如く存在する屋根の下で、様々に営まれる家族の物語。
ミニマムな社会である家族の中に横たわる暴力や複雑な家族関係をスパイス的に描く事で、人の持つ良心がかえって浮かび上がってくる。
前作とは異なる題材を用いながら、藤井監督の描きたいものは、同じ「人の良心を信じる」ということなのではないかと思いを巡らせながら、エンドロールでは清原果那の歌声が気持ち良く胸に流れてきた。
撮影当時、16,7歳だったと思われる清原果那扮する14歳の大石つばめは、違和感のない存在感で、その表情を追うことが停められない。
この娘は、映像の申し子ではないかと思うほど、これからの活躍が楽しみな女優さんである。
それから、エンドロール前の、2020の東京のとあるギャラリーに掲げられた水墨画たちを、かつての書道の先生が眺め行き着いた所には、水墨画なのに色がつけられた屋根の数々を、つばめと星ばあが見渡している一枚にフォーカスしていく演出には、そこに表れないが、成人したつばめの姿や、書道の先生の今の家族を想像する楽しさが残されていて、それこそが映画的楽しみなのだということを改めて思い起こさせてもらえたのであった(了)
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