「ブルース・ダーン×ラブストーリーという変化球」43年後のアイ・ラヴ・ユー 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
ブルース・ダーン×ラブストーリーという変化球
中高年をターゲットにした、よくあるタイプのラブストーリーかと思って見始めると、思いがけずグッと引き寄せられる瞬間が幾度もあった。まず一つ目は、なんと言っても名優ブルース・ダーンが主演を務めていること。つまり、一筋縄ではいかないってこと。いわゆる”可愛らしいおじいちゃん”というステレオタイプからは完全にかけ離れた、我が道を曲げない、クセのある人物像が強烈だ。第二に、評論家でもある主人公がその昔、女優とロマンティックな関係に陥り、43年後の今になってアルツハイマーを患った彼女を追いかけ介護施設に入居するという突飛すぎる設定。さらにシェイクスピア「冬物語」のストーリーラインが決してそのままではなく、うっすらと絡みながら展開していくところも、我々を楽しませてくれる点である。見終わった後、深い余韻をもたらす傑作ではないが、軽やかな香りをそっと残す。偶然見つけて、あ、いいな、と思えるささやかな一作だ。
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