「マスクは三枚重ねに・・・」薬の神じゃない! kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
マスクは三枚重ねに・・・
実際に中国で起きた事件を基にした作品で、高価な抗がん剤が買えずに苦しんでいる人のために安価なインド製ジェネリックを密輸販売した男の物語。
日本においても今でこそジェネリック医薬品の知名度は浸透してきているが、かつては後発医薬品、医療関係者の間では“ゾロ”とか“ゾロゾロ”と呼ばれていた。成分が同じで効能効果も同じ。研究開発費がかからない分だけ安く製造することができ、厚生労働省が決める薬価も先発品よりも低価格なため患者負担も少なくて済む。
昔は医薬情報提供者“MR(medical representative)”という言葉もなく、薬売りは“プロパー”と呼ばれていたものだ。当時は(卸業者を通して)薬品購入担当者と仕入れ価格を交渉したり、医療機関側に薬価差益を生み出させようとしていたが、接待工作や直接賄賂を渡すなど問題点が多かった。今では外資メーカーとの合併等により接待禁止などが打ち出され、メーカーから粗品をもらうのにも制限があったりする・・・
そんな表の仕組みの他に、国が決める“薬価”にはメーカーと厚生労働省との政治的駆け引きがあったりして、画期的新薬“ピカ新”ならば薬価は高く設定できるが、従来品を改良したような新薬だったら低めの設定。さらに薬価ではなく市場価格の調査によって、2年に1度の薬価改定では安く納入されているものなら大幅ダウンを食らったりする。そして、特許の切れた医薬品はゾロ薬品の製造が可能になり、さらに競争が激化していく・・・という薬業界のシステム。
この作品からわかったのは、薬価は日本のシステムとほぼ変わりなし。ただ、保険制度が違うために高価な薬だと買えない患者がいっぱいいることが想像できます。スイスの製薬会社が開発した慢性骨髄性白血病治療薬“グリベック”は1瓶3万元などと言ってましたが、何錠入りかも服用錠数もわからないため、どれくらい高価なのかは判断しかねます。まぁ、おおざっぱに1元=15円として、1瓶45万円!この事件のおかげで医療保険制度も見直されたみたいですが、医療費が払えずに自殺した人も多いのでしょう、きっと。それを10分の1くらいにまで引き下げれば、患者が殺到するのもわかります。
そういう状況下で違法ながらも密輸販売に手を染めた主人公チョン・ヨン。購買グループも最初に訪れた患者のリュ、娘が白血病のポールダンサー・スーフェイ、通訳担当のリウ牧師、盗みが縁だった金髪のポン・ハオとで販売網を増やす。皮肉なことに、チョンの義弟であるツァオ刑事が偽薬摘発担当になってしまった。
いったんはペテン師でもあるチャン(太ったジャッキー・チェンかと思った)に販路を売り渡すが、彼が捕まったと知るや、またも危険な輸入を始めるチョン。しかも、今度は患者のためにほぼ原価での販売だった。
終盤は涙なしではスクリーンを直視できないほど感動。中国でもこんな庶民よりの映画が作れるんだ!と感動しまくりでしたが、ラストのテロップによりその謎もわかります。悪いのは暴利を貪る外国の製薬会社。おかげで医療改革に踏み切りました!という権力側の目論見もわかり、ちょっと残念・・・おかげで0.5ポイントマイナス。
そんな中国映画なのですが、展開は韓国映画風だったり、音楽はインド風だったり、ちょっと今までの雰囲気とは違っていました。俳優が誰それに似ていると皆さん感想を書いていますが、個人的には前半の小汚いチョンは安斎肇、後半に小ぎれいになったチョンは西郷輝彦を思い出しました・・・
momo8さんへ。
安斎肇といえば空耳。空耳といえば安斎肇ですもんね。
ユーチューブなどで過去作品に大笑いして止まらなくなり、徹夜してしまったこともありました・・・w
ノバルティスファーマはドイツではなくスイスですか。すごく詳しい内容のレビューで、業界にお詳しい。日本と中国の一番のちがいないはやはり、国民皆保険制度ですね。価格設定にはお役人のご意向が最優先するのは一緒のようですね。厚生省の体質は戦争前とあまり変わりないような。