「安楽死の是非を問う社会派サスペンス…だと思いきや…。 王道刑事ものなのに、なんでこんなにつまらないの!?」ドクター・デスの遺産 BLACK FILE たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
安楽死の是非を問う社会派サスペンス…だと思いきや…。 王道刑事ものなのに、なんでこんなにつまらないの!?
安楽死を請け負う謎の医師「ドクター・デス」と、それを追う2人の刑事の攻防を描いたクライム・サスペンス。
主人公である警視庁捜査一課の刑事、犬養隼人を演じるのは『ヘルタースケルター』『怒り』の綾野剛。
犬養の相棒、高千穂明日香を演じるのは『君の膵臓をたべたい』『スマホを落としただけなのに』の北川景子。
犬養の後輩刑事、沢田圭を演じるのはドラマ『MIU404』や『望み』の水上恒司。
謎の男、寺町亘輝を演じるのは『シン・ゴジラ』『万引き家族』の、レジェンド俳優・柄本明。
本作の犯人のモデルになったのは、実在の安楽死医師、「ドクター・デス」ことジャック・ケヴォーキアン。
ケヴォーキアンは約130人を安楽死させたが、そのうちの1人の男性に対する自殺幇助で起訴され、殺人罪で約8年服役。2007年まで収監されていた。
彼は釈放後も、2011年に心臓疾患で亡くなるまで安楽死・尊厳死の啓蒙活動を続けた。末期患者を苦しみから救うことが彼の目的であったようだが、その一方で遺体を乱雑に扱ったりする猟奇的な一面もあった様だ。
日本でも2019年11月、京都市においてALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性が安楽死を望み、それを実行したとして2人の医師が嘱託殺人容疑で逮捕・起訴された。
さらに、逮捕された医師の一人・山本直樹容疑者の父親も彼らに殺害されている可能性があり、共犯として山本容疑者の母親も逮捕されている。
膨大な量の証拠があり、その為2022年6月現在でも初公判の日程は決まっていない。
犯人の一人・大久保愉一容疑者は、かねてから「ブラック・ジャック」に登場する安楽死医師ドクター・キリコに憧れていたという。
ドクター・キリコは元軍医で、死を望む負傷兵を多く見てきた経験から、安楽死に賛成するという立場をとる闇医者。ブラック・ジャックと対をなす存在として漫画中に登場する。
事程左様に、安楽死をめぐる事件はフィクションの中だけではない。
安楽死・尊厳死の是非は非常に難しい問題で、もっと盛んに議論すべき論題であると思う。
一応日本は積極的な安楽死は認められていないわけだけど、延命治療を停止するという行為は患者の了承を得ていればO.K.な訳だし…。どこからどこまでが安楽死で、どこからがアウトでどこまでがセーフか、その線引きって結構曖昧なのかも。
鳥取大学医学部准教授・安藤泰至先生は、人の助けが得られない状況で生きたいか・死にたいかという選択をさせるというのは「死になさい」と言っているのと同じである、という旨の発言をされています。これが自分の中では一番しっくりきたかな…。
とまぁ、安楽死の是非はもっとマジで考えるべき題材だと思うのですが、この映画は犯人をサイコパスにすることによって、その回答を有耶無耶にしてしまった。
安楽死を扱った先行作品、例えば「ブラック・ジャック」であるとか、イーストウッド監督の『ミリオンダラー・ベイビー』であるとか、そういった作品の真摯さに比べると、この映画は言っちゃ悪いけどお遊戯レベルです。
とはいえ、この映画はあくまで刑事もののサスペンス。シリアスな文芸映画ではなく、娯楽映画ど真ん中な作品な訳です。安楽死の扱いが軽くても、刑事ものとして面白ければ問題はないと思うのだが…。
率直な感想を述べさせもらうと、これは「真正面からつまらない映画」🌀
凸凹コンビが力を合わせて事件を解決に導くという、刑事ものの王道をしっかりと押さえているにも拘らず、とにかくつまらない💦
役者はとても良いと思う。
粗野で乱暴だが娘をなによりも大切に想っている刑事・犬養と、冷静沈着なクールビューティー・高千穂のコンビを演じた綾野剛と北川景子。この2人のバランスは絶妙デス👍
そして、犯人である木村佳乃さんがとにかく素晴らしい!正直、ボサボサモッサリなおばさんとして初登場してきた時には、木村佳乃さんだと気が付かなかった。一切のオーラを消して、冴えない孤独な女性を演じており、メイクと演技でここまで印象を変えることが出来るのか、と驚かされた∑(゚Д゚)
役者陣には好感が持てたんだけど、兎に角脚本が酷い。
そして演出がダサい。
テンポも悪い。
これらが役者の頑張りを帳消しにして、映画を退屈なものにしてしまっている。
120分がとにかく長く感じた…。
もし本作が1話60分のテレビドラマだったら、まだ満足出来たのかもしれないが、明らかに映画のレベルには達していない。柄本明との追っかけっこシークエンスなんて、あまりにも緊張感が無さ過ぎて失笑しちゃったよ…😅後半は完全に尺が余っており、とにかく進みが遅い。いや〜、怠かった。
似顔絵がどうとかグダグダやってたけど、ドクター・デスは闇サイトを介して安楽死希望者を募っていたんだから、囮捜査とかで簡単に逮捕できそうなもんだけどね。
まぁどうでもいいけど。
上手い監督、上手い脚本家が手掛けていればかなり面白くなりそうな作品だと思ったのだが…。
原作はシリーズ小説なので、お話のストックはまだある。あわよくばシリーズ化しようと目論んでいたのだろうが、一作目がこの出来じゃあ続編は期待できそうにないですねぇ😮💨
繰り返しますが綾野剛&北川景子は凄く良かったので、映画ではなくテレビドラマとして放送していれば人気が出たかも知れない。
イイねありがとうございました😊。安楽死は完全に善 でも 完全に悪 でも無いと思います。この映画はなんの前提、倫理を問うことなく「法律に抵触する=全てが悪で憎たらしい、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という半端で浅はかな「決めつけ」サイコパスで断罪していて・・正直なところ2人の刑事に怒りを💢覚えました。おっしゃる論点、キリコ、イーストウッド、ド共感です。でも取り調べで胸ぐら、人の職場で鼻つまみはチョット監督も脚本家も「世間知らず」すぎかと思いました。長文すみません🙇♂️😊。
原作「刑事犬養隼人 ドクターデスの遺産」は描きが非常に丁寧で、安楽死についてかなり奥深く掘り下げられている傑作です。
一方で、映画となった本作は原作の重厚感やらテンポ感やらが完全に損なわれている駄作。演出から脚本から全てがダサかったですよね...。原作は素晴らしい作品ですので、機会があればぜひ。