「エンタメに振り切った事を良しとするかで好みが分かれる作品です。」ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
エンタメに振り切った事を良しとするかで好みが分かれる作品です。
※結構なネタバレがありますので、お気をつけ下さい。
ドクター・デスと聞くと、プロレスファンなら90年代に全日本プロレスで活躍した「殺人医師」スティーブ・ウィリアムスを思い出しますがw、この作品はそれとは別。
劇場での予告編を観てから、結構楽しみにしていた作品で、綾野剛さんと北川景子さんと言う、二人の実力派俳優が主演とあればある程度は期待して良いかなと思い、観賞しました。
で、感想はと言うと、観応えあります。
どっしりとした重厚な作品でエンターテイメントとしても楽しめるので個人的には好きですね。
インターネット上で安楽死を請け負う無免許医師、ドクター・デスを追う犬養と高千穂のクライムサスペンスで、安楽死と言う難しく問題をテーマにしてますが、さほど硬くないのが良いですね。
安楽死や尊厳死をテーマにした作品はどれもかなり重くて、万人が納得する様な答えは正直導けないかな?と言うのが感想で中途半端になる事も多々ある。
かと言って極端に振り切ってしまう答えを出してしまうのも難しい。
ネタバレになりますが、犯人は実在した安楽死を請け負う医師を敬愛した快楽犯罪者と言うのは賛否両論あるかと思いますが、こちらに振り切った事でエンタメ色が強くなって観やすくなったかなと。
医者として患者と家族の同意の元で安楽死をさせた物語であれば、テーマに沿った内容であってもかなり重いので、楽しめるかと言えばあんまり楽しめない。
そういう部分で言えば、快楽犯罪者になった事で軽くなって、ブレも見受けられるが、割と肩の力を抜いて観られる様になったのではと思います。
綾野剛さんは緩急の織り混ぜが上手い。
以前は何処か癖の強さが滲み出ていて、純粋に演技の部分で評価がしずらかったのですが、様々な作品でいろんな役柄を演じられたのと、歳を重ねる毎にどっしりとした役者さんになられているので観ていて安心感があります。
北川景子さんは所謂クールビューティー系の女優さんで他にもこの手の女優さんはいますので唯一無二感は正直薄いですが、それでも演技にそつがないんですよね。
ただ、もう少し肩の力を抜いても良いのになぁとは思います。
真犯人となる雛森役の木村佳乃さんは正直それなり。
快楽犯罪者としての猟奇的な怖さもあまり感じられないし、何よりも医師としてのバックボーンや、何故安楽死を請け負う事になったかが薄くて解り難い。
快楽犯罪者ではなく、医師としての確固たる思いから安楽死を尊厳すると言うのであれば、もっと毅然とした態度でないと成立しない。
薄いサイコパスに感じて、その辺りがちょっと中途半端なんですよね。
柄本明さんは流石の一言。
でも、使い方が勿体無い。贅沢な使い方です。
ラストに至るまでの沙耶香の気持ちに分かるだけに、犬養と雛森の別荘でのバトルはちょっと雑かな。
綾野剛さんの力量がかなり多く占めている作品ですが、北川景子さんの掛け合いも面白いので、これだけで終わらすのは勿体無いかな。
実力派キャストを揃えて、脚本も演出も確りとしているので観応えのある作品なのは、流石メジャー作品の貫禄と醍醐味かなと。
テーマの振り切りと雛森の描き方の薄さが気になる所はありますが、個人的には悪くないと思いますので、ハードルを上げなければ結構お薦めな作品です。