「また、素晴らしい女性監督が登場」はちどり(2018) abukumさんの映画レビュー(感想・評価)
また、素晴らしい女性監督が登場
映画監督の性別で評価するのは本意ではないけれど、この映画は、女性ならではの力が発揮されている。
丁寧な心のひだを描く、生活描写と静かな映像。男たちの理不尽な言葉と暴力も淡々と描かれる。劇的な展開はほとんどないが、ドラマのクライマックスは最後の災害を通して見るものの心のなかに染みだしてくる。
ウニを演じる少女は、目のきれいな魅力的な俳優だが、演出は少女主演映画にありがちの「可愛こちゃん」スタイルはまったくとらない。ふてくされたり、あっけにとられて無表情になったり、鬱屈して怒ったり、思春期の複雑な心理がよく出ている。
家庭では窮屈な思いをしながら、塾の女性教師とは、自由な意識交換の機会を得る。また手術のため入院した病院では、同室のおせっかいなおばちゃんたちに可愛がられ、素直に笑顔が生まれる。このあたりのウニの表情が美しい。
韓国の1994年の状況は、少女の素朴な目を通じた描写でありながら(だからこそ)リアリティを持って迫ってくる。単に26年前を描いているのではなく、自らを育てた時代を踏まえて現代を見つめる問題意識。
フェニミズムの新しい潮流は、このような人が背負っていく。
若いのに非凡な力量を持った監督だが、自伝的デビュー長編だからこその細部へのこだわりも感じられた。生活描写や空間映像の撮り方に、小津安二郎を感じたけれど、本人の舞台挨拶では、エドワード・ヤンの名前が出ていたので、なるほどと納得。
こういう形で代々、受け継がれて、より深まっていくのですね。
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