「少女時代の刹那を切り取った喪失と希望」はちどり(2018) momoさんの映画レビュー(感想・評価)
少女時代の刹那を切り取った喪失と希望
わからんかったっていう人、もったいないな。
顔だけ知ってる400人のうち心まで知ってる人が人生で何人現れるだろう。漢文は深い。
根幹にあるテーマは少女時代の刹那を切り取った喪失と希望の物語だと思う。
はちどりというタイトルからして絶望の世界に希望を運ぶ愛の鳥。脆さはかなさの象徴の鳥。
この映画には希望を見出したいと思います。
彼氏も後輩もいい時だけ寄ってくる自分都合の親しみでしか無かった。
本当に心がわかる人なんて人生でそうなん人も出会えないんだ。
そんな中でウニはヨンジという心のわかるすばらしい先生に出会えて幸せだと思う。
タバコを吸う大学を休学しているある意味アウトローなかっこいい漢文塾の先生。ましてや木村佳乃と手塚理美を足して2で割ったような美形で優しい女の先生は少女なら憧れると思う。
担任がクソ担任なだけに余計にね。
コロナ時代、会えない人去って行く人もいるけれど、そんな時こそ本当に自分にとって大切な人がリトマス試験紙のようにあぶりだされました。
時代背景はポケベル時代の韓国の1994年だけど日本ではオウムのサリン事件、阪神・淡路大震災も近いあたり。大切なものを見極める時代ってことは今に通ずるものがあって沁みました。
暴力を振るう兄もエリートを期待されすぎたしんどさからの未熟な行動だし、橋の事件で泣き崩れる弱さもある家族の一員である。
クソ親父も手術前には泣いてくれるし母親も夫婦関係を空気のような存在のクローゼットに例える寂しさの中、いつも焼きたてのチヂミとか仕事で忙しいのに手作りのご飯を出してくれる優しい存在。
姉の優しさもひしひし感じる。父親の目をかいくぐって先生を失った橋まで行くシーンが良かった。
家族は最後の砦なんだなと思う。
先生に貸した本がスタンダールの赤と黒だったところも個人的にはツボでした。
浮気クソ親父も含め不良第1号の姉も母もウザイところはあっても家族というのは同じ巣の鳥なんだ。
音楽が絶望的にダサいけど90年代だからやむなし。
そんなことを含めてもそれを超絶する響きがある良作でした。