「14歳の女性を通して描く14歳の社会。」はちどり(2018) kissmedeadlyさんの映画レビュー(感想・評価)
14歳の女性を通して描く14歳の社会。
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おそらく、ある種のコンプレックスや抑圧から生じる男たちのマッチョで幼稚な行動や言動。そしてそれらへの恐怖や保身から呆気なく翻意せざるを得ない女たちの振る舞い。それらをじっと見つめる14歳の左利きの主人公の、世界に対する違和感と揺れ動く感情を通して描かれる1994年という時代。1987年以後、軍事政権から民主政権へと移行し、1988年にはソウルオリンピックを迎え、高度経済成長のさなか、社会は、さながら14歳の思春期を迎えた少女のように、様々な場所で様々な軋みや綻び、あるいは崩壊の様相を呈し始める。ソンス大橋の崩落事件、再開発に対する住民運動の挫折、本来なら社会的優位に立っているはずの男たちのグズグズな姿。何の前触れもなく起こるそれらの出来事の数々を、本作がデビュー作となるキム・ボラ監督は、ロングショットを多用し、あくまでも距離感を持って淡々とさりげなく描き出す。
どこかエドワード・ヤン作品を思わせる、限られた世界と人物関係が描かれるミニマルな内容と構成ながら、その実、社会全体を描き出す手腕には目を見張るばかり。
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