「原作との違い」おらおらでひとりいぐも みるさんの映画レビュー(感想・評価)
原作との違い
原作を読んでからこの映画を視聴しました。
原作は第54回文藝賞・第158回芥川龍之介賞の受賞作です。
原作とこの映画は一見同じ題材の同じストーリーに見えますが、受け取れる感じ方が全く違います。
原作はただただシリアスな内容ですが、映画は同じ題材でもコメディに感じます。
この映画で登場する桃子さんの心の代弁者「寂しさ1~3」は男にしなくても良かったのでは?と感じます。映画から先に見た人は「寂しさ1~3」の存在が素晴らしい物に感じると思いますが、完全にあれが原作の「寂しさ」を奪っています。
もし「寂しさ1~3」を映画でも登場させるなら桃子さん本人にその役を演じさせた方が良かったです。その方が桃子さんが桃子さんと心の葛藤をしているというのがストレートに伝わります。
また「寂しさ1~3」を本映画のように男性の役者で行くならもっと脚本をコメディに振り切った方が良かったのではと思います。現在の脚本ではただただ原作の良さを奪っているだけでなく、映画としての良さも中途半端です。
原作ではこの映画のタイトルの「おらおらでひとりいぐも」という言葉が一番ハッっとさせられる場面で登場しますが、映画では残念な使われ方をしています。
映画では原作の一番素晴らしかった桃子さんの内面が全然表現できていません。
原作が第54回文藝賞・第158回芥川龍之介賞を受賞したのは桃子さんの「内面」の独白に胸を打たれたからです。
この映画が面白かった人は原作も読んでみてください。
…と、ここまで批判的な内容を書きましたが、主演の田中裕子さんや「寂しさ1~3」の役者さんの演技自体は素晴らしかったです。