劇場公開日 2020年11月6日

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「自分らしく孤独と向き合っていく」おらおらでひとりいぐも みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5自分らしく孤独と向き合っていく

2023年1月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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現代社会において切実な問題である、老後の孤独に真摯に向き合った作品である。子育てが終わり、夫に先立たれ独りぼっちになった老女の心情を擬人化し、若い頃の回想を交えて、老後の孤独の中で自分なりに生きようとする老女のヒューマンドラマになっている。

本作の主人公は、75歳の老女・桃子(田中裕子)。彼女は、東京オリンピックの熱気に感化され自由を求めて1964年に上京した。それから55年が経過し、二人の子供は独立し、夫・周造(東出昌大)も他界し、独りぼっちになってしまった。彼女は、彼女なりのやり方で図書館に通い詰め、地球の歴史を勉強したり、自分の寂しい心情と自問自答したり、若い頃を回顧したりして過ごしていく・・・。

主人公役の田中裕子の佇まい、存在感が際立っている。本作の主人公役は田中裕子以外には考えられない。気負わず、自然体で、少しだけ逞しく、あくまで自分らしく、老後の孤独と向き合い自分なりに折り合いをつけていく主人公になり切っている。カメラを全く意識しない演技であり、主人公に密着したドキュメンタリーを観ているようである。

自由を求めて上京した主人公は、意に反して、家族、夫に束縛されることになる。そして、55年後に、家族、夫から開放された時、主人公は、ようやく自由を手にするが、孤独が彼女を待ち受けていた。

主人公の若い頃を演じる蒼井優は、相変わらず安定した演技で若き桃子を好演している。主人公は、若い頃を回顧しているというよりは、若い頃の自分と対峙している。年老いた田中裕子と若々しい未来志向の蒼井優の会話のすれ違いが、歳を重ねるとともに変化していく主人公の心境を浮き彫りにしている。

老後の孤独にどう対処するかの答えは用意されていない。主人公は、自分らしいやり方で、老後の孤独と向き合っていく。主人公と同じ境遇になった時、折角、自由の身になったのだから、主人公のように自分らしいやり方で、老後の孤独に向き合っていきたいものである。

みかずき
琥珀糖さんのコメント
2023年1月12日

コメントありがとうございました。
みかずき様らしい、真面目で正当的でこの映画の本質を突いた
素晴らしいレビューだと思います。

自分のレビューについて言い訳させて貰います。
非常に多層的な作品でしたね。
若い頃の主人公を蒼井優が演じる。
また夫(東出昌大)の亡くなった後こそ、主人公の田中裕子の
再出発とも言える「新しい人生」
マンモスの出現や寂しさ1、2、3など、
ファンタジー仕立ての部分の趣向(面白さ)を最後で呆けているなどと、
誤解されやすい表現をした。
そこが失敗した要因だと思います。
素直に感動した、興味深かったと書けばよかったものを、
なんかお臍が曲がってしまいました。
でも、寄り道には寄り道の良さもあり次に繋がる事もあると、
なぐさめます。
長々と失礼致しました。

琥珀糖
ゆり。さんのコメント
2023年1月12日

私は老後の孤独と向き合う覚悟はまだまだ出来ていませんが、桃子さんのように自然体で生きられたら理想的です。ちょっと希望を持たせてくれる感じが良かったです。

ゆり。