劇場公開日 2020年11月6日

  • 予告編を見る

「老いた蒼井優が田中裕子だという設定にしっくりきた」おらおらでひとりいぐも ピラルクさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5老いた蒼井優が田中裕子だという設定にしっくりきた

2020年11月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

私の頭のなかでつながった作品は『LIFE!』(2014年作・ベン・スティラー監督・主演)である。突然、空想に切り替わるところが好みである。脳内歌謡ショーのシーンが私には白眉だった。
こちらでは特別ドラマチックなことは起こらないけど、生活感にじみ出てるシーンの数々、それが妄想シーンの対となり、二重らせんで物語をなす。この組み立てが、力をこめずして、先の展開へと引っ張ってくれている。老いや孤独といった、力の入れようのない主題にあっていて、よい。
高齢者一人暮らしの生活にひそむクスッと笑えるペーソスをパッチワークしてある。それぞれの短いシーンは、五七五の俳句がそうであるように、短くても含蓄あるから余韻と広がりをもつ。映像は静かでも、映画作り手サイドの『いまのシーンで、どう感じますか?』という問いかけがバンバン届いてきて、うるさいほどである(笑)。
蒼井優ファンだから観たけど、でなければ観てなかった。観て、蒼井優はやっぱり好かったと満足できるほど、蒼井優にウエイトはなかったけど、田中裕子ファンになった。老いた蒼井優が田中裕子だという設定にしっくりきたからである。どちらも眼の底から演技してる。田中裕子を調べたら、映画『天城越え』でモントリオール世界映画祭主演女優賞受賞、とあった。今度、レンタルで借りてみよう。
それと、このレビューを書くにあたりネット検索して知ったのだが、アマゾンがやっているサービスに「オーディオブック」というのがあり、原作(若竹千佐子著『おらおらでひとりいぐも』)があがっていた。朗読者が桑島法子さんという声優さんで岩手県出身。サンプル視聴の一部を聴いてみたが、一瞬で引き込まれた。
有料のサービスなので宣伝するわけではないけど、「桑島法子、朗読、おらおらでひとりいぐも」の検索キーワードは、自分の備忘録を兼ねて、ここにも書き留めておく。

コメントする
ピラルク