「親方!空からドウェイン・ジョンソンが! 既視感バリバリだが、ヒーロー映画なんてこんなんで良いんじゃいッ!」ブラックアダム たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
親方!空からドウェイン・ジョンソンが! 既視感バリバリだが、ヒーロー映画なんてこんなんで良いんじゃいッ!
スーパーヒーローが一堂に会するアメコミアクション映画「DCEU」の第11作。
犯罪シンジケート”インターギャング” に支配された国カーンダックで、太古のヒーローとして崇められてきたテス・アダムが5000年の眠りから目覚めた。強力なパワーを持ち、敵を殺す事にも躊躇がないアダムの存在を危険視したアマンダ・ウォラーは、彼を捕縛するためヒーローチーム”ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ(JSA)”をカーンダックへ派遣する…。
○キャスト
クラーク・ケント/スーパーマン…ヘンリー・カヴィル。
長き眠りから目覚めた怒れる破壊神、テス・アダム/ブラックアダムを演じるのは『ワイルド・スピード』シリーズや『ジュマンジ』シリーズの、名優ドウェイン・ジョンソン。なおジョンソンは本作の製作も務めている。
JSAのメンバーである老魔術師、ケント・ネルソン/ドクター・フェイトを演じるのは『007』シリーズや『マンマ・ミーア!』シリーズの、レジェンド俳優ピアース・ブロスナン,OBE。
もしもドウェイン・ジョンソンがスーパーマンになったら?というドリフのもしもシリーズみたいな事を大真面目にやり切った映画。ザ・ロック様がヒーローコスチュームを身に纏って悪党共をぶち殺しまくり、あまつさえアベンジャーズ…もといジャスティスなんちゃらおぶかんちゃらというヒーロー軍団とバトるという、バカみたいな作品である。そんなもん面白いに決まってるだろっ!!好い加減にしろっ!!
作品の出来としてはかなり不格好。カーンダックの現状について大した説明が行われないので、インターギャングとは何者なのか、アドリアナ一味は何をしている人たちなのか、なぜ悪魔の宿った王冠を探しているのか、なぜブラックアダムを復活させる呪文を知っていたのか、その辺の事が全然よくわからない。
ロック様が蘇ってからは面白いのだが、それに至るまでのセッティングの段階がとにかくヘナチョコ。もう少しなんとかならんかったのか?
本作は一応『シャザム!』(2019)のスピンオフというか、地続きの作品である。ヒーローオタクな男の子とのバディものという点は、明らかに『シャザム!』を意識してのことだろう。そのため、物語に目新しさは特にない。
ブラックアダムと敵対するJSAの面々も既視感バリバリ。ホークマンは某社長、ドクター・フェイトは某ヒゲの魔術師、アトム・スマッシャーは某蟻男、サイクロンは某銀髪ミュータントそのまんまである。JSAがホークマン邸から飛び立つところなんて完全に『X-MEN』(2000-)だったし、流石にこれマーベルから怒られるんじゃありません?そういや、ブラックアダムの冗談が通じないところは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)のドラックスっぽいかも。ドラックスを演じるデイヴ・バウティスタも元プロレスラーだし、なんかこの類似には作為的なものを感じるぞ。
個人的にはアベンジャーズ& X-MEN対ロック様という夢のカードが見られて大満足だったのだが、ヒーローたちの造形をライバル会社から丸パクった件に関して腹を立てたり呆れたりする人がいてもおかしくないかも。パロディ映画として受容することが出来るか否かで、この作品の評価は大きく変わるかもしれません。
JSAがパチモン集団である事は否定しようもないが、彼らのキャラクター像はかなり好み。というか、本家の社長とか魔術師とは比べものにならないくらいめちゃくちゃ正当派なヒーローが揃っており、この1作で終わらすには勿体ないくらいに魅力的なチームとなっている。亡きドクター・フェイトの技をホークマンが受け継ぐという王道展開は、全てのアメコミ映画に見習って欲しいと思うほど大好き。めちゃ熱ですやんこんなん!!
JSAの長編映画を作れ!とまでは言わないが、彼らを主役にしたテレビシリーズを制作すればかなり良い線いくんじゃなかろうか?
「俺は誰にも従わない」と吐き捨てるブラックアダムは実にロック!ザ・ロック様だけに!座り心地が悪いと玉座をぶっ壊す様にも痺れた〜。もうこれ最高のヒーロー像じゃないですか♪
『シャザム!』の設定を逆手に取ったテス・アダムの正体など、ただ単純なだけではなくちゃんと驚きのポイントも用意されている。うん、花丸💮
てめえらに今日を生きる資格はねぇ‼︎なブラックアダムと、ヒーローは何があっても人を殺してはならない‼︎なホークマン。この対象的な2人の火花の散らし合いも良い。どちらの言い分もわかる!ヒーロー同士の対立といえば『バットマンvsスーパーマン』(2016)なんて映画もありましたが、それよりも本作の方が異なる正義の対立をよほど上手く描けていたと思います。
ラスボスにやっつけ感がある?…確かに。
アドリアナ親子のキャラ薄くない?…確かに。
インターギャングって結局何だったんだ?…確かに。
仮死状態にしたり蘇らせたり…。JSA自分勝手すぎない?…確かに。
考えれば考えるほど不細工な映画ではある。しかし、それを補ってなお余りあるエネルギーが本作には満ちている。興行的にはコケたし、批評も散々ではあるのだが、ヒーロー映画って本来このくらいユルユルで良いんじゃないのっ!?
この続きは100%ないだろうが、どっかの大金持ちが全額出資したりなんだりして『ブラックアダムvsスーパーマン』が作られたりしないだろうか…。うーん、それ観たい。
…にしても、イスラエル-ハマス戦争が勃発してしまった事によってこの映画の見え方も大きく変わったように思う。どう考えたってカーンダックはパレスチナ🇵🇸で、インターギャングはイスラエル🇮🇱、JSAはアメリカ🇺🇸として描かれてますもんこれ。
ただのバカ映画だと思っていたが、世界情勢が悪化した事で他のどのヒーロー映画よりも政治的な内容の作品になってしまったような気がします…。