「彼とそのファンへの侮辱」エルヴィス 桜さんの映画レビュー(感想・評価)
彼とそのファンへの侮辱
IMAXにて鑑賞。
アメリカの濁り狂った時代の最中、「自分のしたい音楽を表現する」ことで''異端児''として扱われながらも、世界中から愛される「キングオブロック」として、その短い生涯を終えた男エルヴィス・プレスリーの半生を描いた作品。
私は小学五年生の頃に、ディズニー映画「リロ&スティッチ」の影響で彼の音楽に惚れ、初めてレンタルCDショップで借りた彼のベスト盤の中の「アメリカの祈り」を聴き
、幼きながら涙し、そこから10年以上彼の素晴らしい歌声と曲を愛し、ファンとして生きてきた。
なのでこの映画が作成予定だとニュースの小さい記事で発表された時からずっとこの映画の公開を待ち望んでいた。
そんな私が思うに、この映画は正直に言えば満足に至らなかった。
勿論冒頭から「アメリカの祈り」をフルスクリーンかつライブサウンドで聴けたこと、伝説のテレビ放送の「If I can dream 」を聴けたことは最高に興奮したし、主演のオースティンバトラーの声が、なんといってもエルヴィスそのものであり、そこは高く評価出来るので、星は2.5。
ただ、それと同じくらい文句がポンポン出てくる。
まず、どうして1曲1曲をしっかりフルで聴かせてくれないのか?
ボヘミアン・ラプソディのような映画を期待していたのが悪かったのか、どれもダイジェストばかりで、ずっと歯痒い気持ちにさせられていた。
特に「If I can dream」だけは、、、!
あの1曲だけでも彼の偉大さと愛される理由がわかるような、大事で個人的にも一番好きな曲だったのに、やっと聴けると思ったら、まさかのダイジェスト。
エルヴィス並びにそのファンをバカにしてるようにしか感じなかった。
エンドロールの曲も酷い。
名曲に余計な現代風アレンジを加えてあったり、カバーとか聴きたくない。
彼の歌声で幕を閉じて欲しかったのに。
そして、これはビジネス映画ですか?
主演か?と思うくらいトム・ハンクス演じるトム・パーカーに焦点を当てすぎているし、エルヴィスをどうプロデュースしていくかについての映画を見たかったわけじゃないのだけれど、テーマが「金とビジネス」かってくらいその辺の話を長たらしく描き過ぎてるし、途中から見てて腹が立ってきていた。
冒頭でトム・パーカーが「エルヴィスを殺したのは誰か?私ではない!」と豪語する。そんなに言うからには、本当の死の真相みたいなものが見れるかと思いきや、「彼を殺したのは愛だ」。
は?
いやいや、どう考えてもお前やん!!
ちゃんと全部見終わった上で思いました。お前だよ殺したのは。
自分の借金返済の為に、彼が築いたものを全部利用して、親ヅラして、縛り付けて、やりたいこともさせず、休ませもせず、寄生虫のように血をずっと吸い続け、やっと彼が全てを知り、切ろうとするも、「あそ、じゃあ金返せよ」と手のひら返しをして、死ぬまで利用し続けたわけだ。
愛?どこが。お前しかいないわ。
しかも、彼の奇抜なダンスや曲調、マネージャーの意向を無視し、アメリカを思い亡き偉人の為に歌ったりする行動を、どうしてあんなに悪行のように描くのか。
そこが彼の良さであり、世界中から愛される魅力なのに、
製作サイドが意図的に悪者に描いているようにしか感じなかった。
話もどんどん暗くなっていくから、見終わって全然スッキリしなかった。
同じテイストのボヘミアン・ラプソディも、同じくフレディの死にて幕を閉じたが、最後はスッキリと気持ちよく終わらせてくれたから良かったのに、あれじゃ最後までトム・パーカーの操り人形じゃないか。
彼は煙草もお酒も女遊びもしないのに、落ちぶれていく様をわかり易くしたかったが為にあんな風に描いて。
しかも序盤の彼のテレビ初出演での女性の発狂シーンも、はっきり言って変です。
劇的に見せたいが為にそういう演出にしたんだろうけど、わざとらしく発狂してるせいでなんか宗教っぽく見えちゃう。
彼が女性から熱狂的な支持を受けていたのは勿論わかっているが、それにしてもあそこまで発狂はしてないと思う。
この映画を通じても、エルヴィスは製作サイドの好きなように描かれて、客引きの為に利用されるという壮大な皮肉を表してるのかな?
ずっと前から楽しみにしてきたのもあって、とても残念だった。
ただ、やはり作中でも彼のパフォーマンスは物足りないものの、とても素晴らしかったので、もう一度見るとしてもサブスク解禁後でいいかな。
良かったら何度でも映画館へ足を運ぼうと思っていたのに、本当に残念でならない。
正直タイトルから手抜き感が否めなかった。
私だったら「If I can dream」、邦題は(あまり好きな名前ではないが)「明日への願い」にするかな。
そんな名前にするまでもない作品だけれど。
ここまで長々と読んで下さりありがとうございました。
とても彼を愛しているので、ついつい熱くなってしまいました。
いなかびとさん、共感のコメントありがとうございます。
本当にそう思います。
なるほど、貴重な情報感謝します。
見てみます!
フォローさせていただくので、これからもよろしくお願いします。
桜さんの意見に全く同感です。プレスリーを貶めているとしか思えない。
「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットしてから、柳の下のどじょうを狙ってこの手の映画がいっばい作られています。ドキュメンタリーも含め。その中で私が感動したのは、アレサ・フランクリンの教会コンサートの映画でした。これだけが鑑賞するに値する映画でした。映画製作会社がファンが見るだろうと考えて作っています。次は早世したマイケル・ジャクソンかカレン・カペンター、或いは不慮の事故で亡くなったジョン・レノンか。
ジョン・レノンを殺害した男の人生を映画にした方がいいかもしれない。