「乗れなかった人へ」ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結 tkryさんの映画レビュー(感想・評価)
乗れなかった人へ
それはあなたのせいじゃないです。
必要以上の残酷描写があります。生理的に合わない人もいて当然。観る人を選ぶ映画です。
私自身はグロ描写も含め、連中の活躍に大いに笑い、ときには感動も覚えました。
ちなみに日本語サブタイトルに反して彼らは「極悪党」ではないです。
ただ一人を除いて。
とかくアメコミヒーロー漫画でヴィランというと、「正しい目的のためなら手段を問わない」サノスやオジマンディアスとか、「ヒーローの正しさの矛盾を糾弾してくる」ジョーカーなどの魅力的な奴が思い浮かべられます。
スーサイドスクワッドの連中は生きるためにチンケな犯罪に手を染めた奴とか、そもそも人間社会の外側にいるような奴らです。
つまり、ヴィランというよりは、誰からも顧みられない負け犬たちです。
MCUガーディアンズの連中も同類項ですが、ディズニーより規制が緩い分、ガン監督の嗜好が色濃く投影されています。
この映画はそんな負け犬たちが、否応なしに特攻作戦に投入させられ、すったもんだした挙句、彼らなりの戦い方で、うっかりヒーローになってしまう映画です。
「精神異常者だって、サメだって、ネズミだって、誰だって、目の前の困っている人々を救えばヒーローになれますよ」という着地です。
これこそがヒーローコミックの根源的なテーマでしょう。
バカバカしい外見とか人体破壊描写に目を惹かれますが、一本筋の通った、描くに足るテーマを照れずに描ききっていると思いました。
個人的に白眉と感じたのは、ポルカドットマンの結末。幼少期のトラウマを正義のパワーに転化していく様が最高。
また、人気の高いハーレイはようやくキャラが確立できたと思う。脱獄シーンの楽しさ、戦闘バリエーションの豊かさを堪能していくなかで、舞う花びら。精神を病んでる彼女の歪んだ精神世界を表したものと思う。だから、彼女はあんなに楽しそうに人を殺しまくっているんだと、ドン引きするとともに悲哀を感じて不覚にも涙がこぼれてしまいました。
ネズミの使い方も良い!ある意味、ラストは人体破壊描写よりグロだけど。
「一寸の虫にも五分の魂」ってことですよね。
「正しい」目的のためなら手段は問わない、アメリカの負の側面を体現したような、サノス的思考の持ち主のあいつですが。
ああいうワルって正直嫌いになれないです(笑)
総じて、グロ耐性があればバカ映画としても十分楽しめますし、単純な面白さの先もしっかりと描かれている傑作だと思います。