「ジェームズ・ガンのワルノリ全開!トロマの血が騒いだか?!!」ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
ジェームズ・ガンのワルノリ全開!トロマの血が騒いだか?!!
ジェームズ・ガンという監督がくせ者だということは、もはや有名な話だが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に関しては、マーベルやディズニーというフィルターもあっただけに、ある程度のシュガーコーティングがされていた。
その点でいえば、今回のワーナーもそうかもしれないが、なかなかの冒険というべきか、ガンを引き込む条件として「自由度」の高さを提示したようにも感じられるし、そこまでしてでも引き込みたかったのだろう。
マーベルへの対抗意識も感じられるが、一度は過去の差別的ツイートを理由に解雇されたものの、再び引き戻され『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』を制作しており、両社に跨る監督となったのだ。
『ジャスティス・リーグ』でザック・スナイダーの代打として、『アベンジャーズ』のジョス・ウェドンを監督に起用したこともあったが、本格的に1本を任せるというスタンスではないのに対して、ガンの場合は、HBO Maxで配信されるピースメイカーのスピンオフにも引き続き製作という立場として関わることもあり、ディズニーがガンの脚本にどれだけ寛容な態度がとれるかによる。
ここが難しい分岐点でもあるし、あくまでファミリー層をターゲットとしたいディズニーにとって、『デッドプール』をどうMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に取込むかというハードルと重なる部分があるのだ。
ガンは、「悪魔の毒々モンスター」シリーズや『カブキマン』で知られるゲテモノ映画の量産企業トロマ・エンターテインメントで映画作りを学んだことは、映画ファンであれば知られていることだが、今回はガンのトロマの血が騒いだというべきか…また、それができるまたとない場を与えられたことも重なり、とにかくお金のかかったトロマ映画のような作品に仕上がっている。
今まで『スクービー・ドゥー』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』などで回り道をしてきたようだが、これが本来、やりたかったことであるような気がしてならないし、この環境を与えてくれたワーナーに悪い印象はないはず。かと言ってマーベルが今作ほどの「自由度」を提供できるかというと、難しいのではないだろうか。
今回『ザ・バットマン』と同様に、DCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)からは、完全に外れている作品かと思いきや、一応はDCEUに属しているという点もワーナーの寛容さを感じる。
とはいっても、前作『スーサイド・スクワッド』と今作の両方に登場するハーレイ・クイン、リック・フラッグやキャプテン・ブーメランなどのキャラクターも別アースの別人の可能性も高い…とはいえ、フラッシュのいるDCでは、フラッシュ次第で何とでもなることもあって、ある程度、泳がせておいても、「クライシス・オン・インフィニットアース」のようなイベントによる力業で合流させることも可能なわけで、非常に便利な環境である。
マーベルのドラマ『ロキ』でも「マルチバース」設定に本格突入したものの、正直言って、まだまだ手探り状態であるし、『ロキ』をシーズン2構成にしたのは、シリーズの動向次第でそのまま「マルチバース」設定を続けるか、あくまで「フェーズ4」のイベントとして処理するなどの軌道修正をするためだろう。
ウィル・スミスが降板したことで、デッドショットの代打キャラクターとして が登場したわけだが、全体的に登場キャラクターが地味で、コミックファンでも知らないようなコアなキャラクターまでチョイスしているわけだが、冒頭のシーンでその謎がわかる。
マーベルのMCUとかすかながら繋がっている『エージェント・オフ・シールド』や『デアデビル』などもそうだし、Disney+のドラマシリーズにおけるヴィランが地味な理由は、映画シリーズに出せるほどのメインどころを避けているという点が大きいのだが、今作は前作『スーサイド・スクワッド』よりも消耗品部隊というイメージが強くなっており、その中でもあえて単独映画では、メインヴィランにならないような、原作でも地味なキャラクターをサブとして配置することで、映画内で自由に扱える(遊べる) と逆に利点として捉えていることを感じたとき、誰がどうなるかわからない不安感も煽られたりするのがメタ構造としてもよくできている。
今回登場する巨大ヒトデのような「カイジュウ」ことスターロは原作にも存在していて、ジャスティス・リーグが初めに戦ったヴィランではあるが、デザインのチープさが正にトロマ感にふさわしいともいえるだろう。
トロマの場合は、ゴア描写のチープさによって、マイルドにしてあったのが、今回はお金がかかっていることもあって、トロマがやっていることは、本当はかなりグロいことなのだということを、当たり前なのかもしれないが、あえて気がつかされた
ガン作品の常連であるマイケル・ルーカーやタイカ・ワイティティ、弟のショーン・ガンなどお馴染みの面々の登場も含め、ガンの悪ノリがハイレベルにまでに達した作品であることは間違いない。
ここまで自分でハードルを上げてしまっただけに…どうする『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』