劇場公開日 2022年3月11日

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「法と秩序の外側」THE BATMAN ザ・バットマン 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5法と秩序の外側

2022年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画の上映時間に長さを感じるかどうかは、実際の上映時間以上に作品がどれだけよくできているかで決まると思う。この映画は少し長く感じた。あくまで「少し」だ。
今回の悪役リドラーは知能犯以上に思想犯だった。社会には秩序がある、だが社会の秩序は狂っている時がある。狂った秩序を正そうとすると、その秩序内の法や規律を守っていられない。そんな時は法の逸脱こそが、法や規律を超えたもっと大きな意味で正しい行為となる。リドラーはそういう地点に位置しそうになっている。(完全に達し切れていないように思う)
そもそも、バットマンは法で裁けない悪を力で裁く存在だ。だが、街の名士として秩序内の立場を保証された存在でもある。彼の出自はリドラーにつけこまれるポイントだ。最後に究極の善人となるような決断を下すバットマンだが、あれはあれで確かにヒーローの姿のひとつだろう。しかし、法の外に出ることが時に正しいことになるということも否定できないことも確かだ。

杉本穂高