「「BULLET TIME」オレだけの時間だぜ。 20年ぶりのリユニオンは、まさかのラブ&ポップ路線!?」マトリックス レザレクションズ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
「BULLET TIME」オレだけの時間だぜ。 20年ぶりのリユニオンは、まさかのラブ&ポップ路線!?
ディストピアと化した現実世界と「マトリックス」と呼ばれる仮想世界、その2つを舞台に繰り広げられる人間と機械の戦いを描いたSFアクション『マトリックス』シリーズの第4作。
精神に不調を抱える著名なゲームデザイナーのトーマス・アンダーソンは、「ワーナー・ブラザース」から自身が20年前に制作した歴史的ゲーム「マトリックス」トリロジーの続編を作るよう強要される。
意志に反した作品を作る事や、若いスタッフが銘々に考える自分勝手な「マトリックス」像に強いストレスを覚えたアンダーソンは、次第に妄想と現実の境目がわからなくなってゆくのだが…。
◯キャスト
トーマス・アンダーソン/ネオ…キアヌ・リーヴス。
アンダーソンの同僚、グウィンを演じるのは『アダムス・ファミリー』シリーズや『バッファロー’66』のクリスティナ・リッチ。
誇張抜きで世界を変えた伝説的トリロジー『マトリックス』(1999-2003)。その完結から18年、まさか続編が作られるとは!
死んだじゃん!ネオもトリニティーも死んだじゃん!!
製作費1億9,000万ドルに対し、全世界興行収入は1億6,000万ドル程度。コロナ禍明けというタイミングの悪さ、そしてストリーミングサービス「HBO Max」での同時公開という逆風はあったが、それにしてもこの大コケっぷりというのはちょっと信じられない。
『リローデッド』(2003)公開の時にエージェントのコスプレをしてアキバとかを練り歩いてた奴らはちゃんと本作も観たんだろうなぁっ!!
興行収入の低さに加え、批評的にも賛否は真っ二つ。コレはやばいかも…と恐る恐る鑑賞してみたのだが、いや面白いじゃん!
確かに方向性は変わったが、全然オリジナル・トリロジーと比べても遜色のない出来。本作のおかげで『レボリューションズ』(2003)の残尿感も払拭されたし、これは作って大正解だったと思います👍
監督/脚本はウォシャウスキー姉妹の姉、ラナ・ウォシャウスキーのみ。ともに映画を制作してきた妹リリー・ウォシャウスキーは不参加となっている。
キャストはキアヌ・リーヴス、キャリー=アン・モス、ナイオビを演じたジェイダ・ピンケット・スミス、メロヴィンジアンを演じたランベール・ウィルソンがカムバック。残念ながらローレンス・フィッシュバーンとヒューゴ・ウィーヴィングは不参加なのだが、モーフィアスとスミスに関しては違和感のない形でキャスト変更が行われているのでその点において不満はない。…まぁ彼らが引き続き出演していればもっとお祭り感は増していただろうけど、そこは仕方ない。
リリーの不参加、そしてキャストの加齢も相まって、アクション面に関しては確かに弱くなった。常軌を逸したバイクアクションや機械軍団との大戦争を期待すると肩透かしを喰らう事になるだろう。
でも、本作で重要なのはそこじゃあないんです。こういうン十年ぶりの新作もので大事なのは、いかに製作陣が作品を楽しみながら作っているか、そしてそれが観客に伝わるかどうかなのだと思っています。
その点において言えば、本作はまぁ正直かつのびのびと撮られており、観ていて気持ちが良い✨
「世紀末から20年も経ってるのに、今更人類の滅亡もクソもないだろう。それよりも身近な人を愛そうぜ!」というラナ監督の声が聞こえてくるような、まさかの正統派ラブストーリー。過去作にあった窮屈な悲壮感は見事に消え失せ、敵も含めて誰1人として死なないというスカッと明るいポップさには少々驚くも、人類ももう十分戦ったんだからこのくらい緩い感じだって良いよねぇ、と納得出来る物語に仕上がっている。
救世主として生きざるを得なかったネオとトリニティーへのご褒美のような作品で、鑑賞しながらつい頬が緩んでしまった。
冒頭からまさかのどストレートなメタネタ。「ワーナーからマトリックスの続編作れって言われちゃってさ〜。もうまいちっんぐ!」という立場に追いやられるアンダーソンはまさにラナ監督そのもの。おそらく、これまでに何度もこういう要求がワーナーから下されていたのだろう。
その鬱憤を晴らすがの如く作中でぶっちゃけるという、『マトリックス』じゃないと許されないような反則技から映画が始まるというのがまず面白い。アンダーソンの上司という役割を知らずのうちに押し付けられていたスミスの机上に、あのぶん殴られシーンを模った銅像が置いてあるというのがまた爆笑ポイントなのですっ🤣
本作を観て思うのは、つくづく『マトリックス』はウォシャウスキーズの個人的な物語だったんだな、という事。
世界的な名声を得ながらも仕事のストレスで鬱になる中年アンダーソン/ネオがラナ監督のアバターであるのは一目瞭然として、満たされた生活を送りながらもどこかに違和感を覚える女性ティファニー/トリニティーもまた監督の分身である事が作品から窺える。
一見熟年カップルものにも見えるが、本作はむしろネオとトリニティーという2つに分裂した監督のゴーストを1つに再結合するための儀礼だったのかも知れない。だからこそクライマックスで、ネオではなくトリニティーに飛行能力が宿ったのだろう。
本作によりようやく、ラナ監督は『マトリックス』のマチズモを葬り、本来のセクシャリティであるフェミニニティーを作品に反映させる事が出来たのではないだろうか。この作品が持つ明るさは、そんな彼女の晴れやかな心情がフィルムに表れているからなのかも知れない。
アクション的には弱くなったものの、映像的な面白みは今作にも多分に含まれている。特に、ネオのバレットタイムにバレットタイムで対抗するという「ザ・ワールド」ッ!時よ止まれ!な展開は『ジョジョ』みたいで最高✨こういう印象的なザ・マトリックスなシーンがひとつでもありゃ、それはもう勝ちよ勝ち。
ラナ監督もキアヌもキャリーも、みんな楽しそう。観ているこっちも幸せになる良い同窓会だったと思います。
本作の終わり方をみる限り、流石にこれでもうシリーズは完結したのだろうと思っていたのだが、どうやら水面下では新たなプロジェクトが動き出している様子。
多分ネオとトリニティーの物語ではないのだろうが、モーフィアスver.2をはじめとする新キャラたちは魅力的だし、彼らを主人公にして新救世主伝説を語り直すというのは全然アリだと思う。その際には是非、スミス役としてヒューゴ・ウィーヴィングにカムバックをお願いしたい🙇
ゆうさん、コメントありがとうございます♪
やっぱり『マトリックス』シリーズはヒューゴさんありきって感じですよね😆
いや本当に結構良い映画でしたよ!是非もう一度鑑賞してみて下さい!!
共感ありがとうございます アクション弱い、ヒューゴカムバックご所望に激しく同意です 個人的にはガッカリ作品だったんですが、たなかなかなかさんの鋭い洞察レビュー読んだらあれ?そんなに悪くなかったかもって思えてきた