「20年分のアップデートの成果」マトリックス レザレクションズ バスト・ラーさんの映画レビュー(感想・評価)
20年分のアップデートの成果
マトリックスの続編かあ~、でも私が見たいのは1.5でも1'でもなく4なんだよなあ、3の続きじゃないて噂もあるし、うーむ
なんて公開前は思っていましたがちゃんと4でした!なんだよも~
というか作中に「リブートはダメ」みたいなメタ発言わざわざ入れてる所をみるとミスリードを誘うためにわざと誤情報放置してたんじゃなかろうか
旧作のマトリックス全体を通して一番好きな場面はアーキテクトおじさんとの対話シーン、人々を解放する為の存在だと思われた“救世主”が実はマトリックス内に発生するバグを一ヶ所に集めて効率良く処理するマトリックスを維持するためのシステムの一部だったことが明かされる、オーウェルの1984を地で行くシビれるシーンだ(他にもこれまでの救世主とネオの差異がトリニティだとかネオがマトリックスに戻れば解析され、より安定したバージョンにマトリックスがアップデートされるなど今作でも重要な情報はほとんどこのシーンですでに暗示されている)
だからこそ完結編観賞後に、これ…バグが処理されないままアプデ入ったけど大丈夫なの?てか望む者は解放するとか言ってるけどもっと電力面ヤバいんじゃ、とかせっかくネオの特異性としてトリニティの存在が布石になってるのに途中で死んじゃうからイマイチ分からないまま無駄になっちゃうし、ぜんぜん完結してないよ!と言う不満があった
そんな不満にほとんど答えてくれたのが今作、それだけでも価千金である
やっぱりぜんぜん大丈夫じゃなかった!人類を解放したことによって機械同士の戦争になるほど電力供給の低下したマシンシティと人類のつかの間の平和、しかしその平和も長くは続かず(それでも機械戦争を目撃するナイオビけっこうおばちゃんだったから現実世界とおなじ時間経過の20年がマトリックス内でも経過しているとしてで60-20で40年くらいか)「新たな力が現れる」という言葉を残し預言者は消滅、大規模アップデートが完了し新たなバージョンのマトリックスが再起動する
皮肉なことにアーキテクトの軽視したネオとトリニティの絆を利用し膨大な電力を生み出し安定したマトリックス、更にはネオとスミスの負の結びつきまで利用しネオをマトリックス内に囲い込むことにも成功している、かつてないほど強固な構造を獲得したマトリックスに解放軍はなすすべなく諦めかけている
というクロニクルを前日譚にしたのがいい、何があったか説明は必須だけど本編でやるとターミネーターシリーズ群みたいにグダる可能性大だからね
序盤の各場面の見せ方もいい、最初に旧作のシーンによく似た場面を見せておいて(どうやらモーダルという空間らしいぞ)、モーフィアスと名乗る人物にネオを探さないと、とか言わせる、実はそれはマトリックス内のトーマスアンダーソンとして生きるネオがつくったゲームプログラム空間でモーフィアスもゲームキャラだったという仕掛け、現実を一番大きな箱だとするならば中くらいの箱がマトリックス、一番小さな箱が劇中劇のようなバイナリーだとすれば大きな箱から来たバッグスに接触して覚醒したモーフィアスは小さな箱にいながら中くらいの箱にいるネオよりも高次な視点を持つ
この奇妙な感覚の捻れが箱の外から映画を見ている私には、そうそう、この感じがマトリックスだったよと思い起こさせる
もちろん変わったことだってある、ネオもトリニティも歳とったなあ、でもそれはいい意味で
新モーフィアスはけっこう明るくてオリジナルの狂信的な必死さがないし、スミスも気まぐれに協力してくれたりラストのネオとトリニティとアナリストとのやりとりも中二的セカイ系深刻さとは無縁、もしかしたら20年の歳月はマトリックス4には必然だったのかもしれない
年取るって悪いことばっかりじゃないなあ