「なぜ、いま新たなマトリックスを作ったのか」マトリックス レザレクションズ ホラー好きさんの映画レビュー(感想・評価)
なぜ、いま新たなマトリックスを作ったのか
公開当時、世界に衝撃を与えた映画。
斬新な映像体験、
“現実”と思っていた世界は実はバーチャルでしかなく、現実の肉体は機械にエネルギーとして消費されていたというストーリーも。
ただこの20年の間に、映像はパロディに散々消費されつくし、現実社会も近づいたこともあり、いまや目新しさはない。
ネオがスミスを倒した後、機械はエネルギー(人間)を安定させるために、より人が望む仮想世界を作り出した。
人が望み、安らぐ幸せな世界。
現実世界でも機械は人を襲うことをやめ、それなりに幸せに暮らしている。
ーなぜ、ネオが必要なのか、なぜ、新作が作られたのかー
その答えは映画の最後にある。
女性であるトリニティが救世主として目覚め、新たな世界を創造する。
監督自身がトランスジェンダーであり、現実社会から、性差からの解放を望んだのではないか。
抑圧された現代社会へのメッセージを、今だからこそ訴えたかったのではないかと感じた。
また、映画作中ゲームとして、第三者の視点で“マトリックス”を議論するシーンがある。
ブームとして動画として消費されたマトリックスへの、監督の抗議ではないかとする解釈も興味深い。
私としては、映画自体はまあまあ面白かったけれども、マトリックスとしての完結を見るなら、今作は不要だったと思う。
仮にネオ達が新たな世界を構築したところで、それは機械と何ら変わらない。
どこまで行っても、万人が満足する世界など存在しないと思うからだ。