「セルフオマージュと自虐ネタ満載のファン感謝映画」マトリックス レザレクションズ といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
セルフオマージュと自虐ネタ満載のファン感謝映画
過去の三部作は鑑賞済みです。
一作目の『マトリックス』は小学生の頃にテレビ放送されたのを録画で鑑賞し、鑑賞から20年経った今でも覚えているほどに繰り返し観て楽しんだ作品です。
二作目『リローデッド』と三作目『レボリューションズ』も鑑賞しましたが、個人的には「蛇足」という印象ですね。一作目の『マトリックス』は単体としても非常に優れた作品で綺麗に完結していたにも関わらず、二作目三作目で無理やり風呂敷を広げて無駄に複雑になってしまい、収集が付かなくなった印象です。
そしてマトリックスシリーズの18年ぶりの続編である本作を観た結論ですが、完全に「ファン向け映画」って印象ですね。初見の方がどれほど楽しめるのか分かりませんが、用語などがほぼ説明なしに進むため「こまけぇこたぁ良いんだよ」のスタンスで観ないとついていけない気がします。
『リローデッド』『レボリューションズ』のような「蛇足」とまでは言いませんが、「オマケ」のような作品。観て良かったとは思うし面白かったけど、18年ぶりに今更作るほどとは思えませんでした。「続編ではなく単体として観られる」と事前告知でありましたが、そうは感じませんでしたね。過去作を鑑賞していることが前提になっているようなセルフオマージュや、『マトリックス』シリーズの世評を知っていることが前提の自虐ネタなどが非常に多いです。「この映画観てるってことは当然前作観てるでしょ?」っていう強気な制作陣の姿勢が透けて見えます。正気か?20年前の映画を観た前提で話進めていいのか?新規ファン増やす気は無いのか?
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ゲーム会社でプログラマーとして働くトーマス・アンダーソン(キアヌ・リーヴス)は、99年に『マトリックス』という伝説的なゲームを生み出した有名な人物であった。しかしそれ以降はゲーム制作は上手くいかず、業績も悪化してきていた。クライアントから「『マトリックス』の続編を作れ」と指示を受け、それについて会社のCEOのスミス(ジョナサン・グロフ)と対立することになる。ある日、会社で警報が鳴り響き避難するよう言われるが、トーマスの携帯に謎の人物からメールが入る。メールの指示に従い避難の人込みに紛れて指定されたトイレに向かうと、そこでゲーム『マトリックス』の登場人物であるモーフィアス(ヤーヤ・アブドゥル=マーティン2世)と出会う。
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正直初見には優しくない映画だと感じました。事前の告知で「過去作観ていなくても大丈夫」とか「過去作とは完全に別物として観てほしい」みたいな情報があったような気がしますが、あれは嘘です。過去作どころか、過去の作品が世間からどのような評価を受けていたかなども理解できていないと意味の分からないシーンがいくつもあったように感じます。「マトリックスシリーズ完全初見です」っていう人の意見も聞いてみたいものです。
とにかく冒頭から登場人物の口を借りて制作陣(ウォシャウスキー監督?)の愚痴が展開されたり、セルフオマージュが多用されたりする印象です。主人公のトーマス(ネオ)がゲーム制作を行っている時の「クライアントのワーナーブラザーズから続編作れって言われた」とか、完全に愚痴ですよね。ゲーム開発の会議の中の台詞でも「シリーズ一作目はあんまり好きじゃなかった。世間の評価と逆でね」というものがあったりして、一作目から右肩下がりに評価が下がっていたのを監督自身も結構気にしていたんじゃないかと感じさせる部分もあります。
ただ、ストーリーは結構「なるほどそうきたか」と思わせる部分はありました。だって前作で主人公もヒロインも死んでるんですから、どうやって続編作るのかは過去作見た人は全員気になってた部分だと思います。多少無理のある論理ですが主人公とヒロインを復活させ、そして過去作の複雑なストーリーを踏襲した上で新しい物語を描く。これは素直に賞賛します。ここは本当に良かった。
過去作からのキャスト変更に関して、私は好意的に受け取っています。
役者のスケジュールなどの関係で、エージェントスミスやモーフィアスの役者変更が行われています。「役者が変わっている」とご立腹のレビューも少なからず見受けられますが、これはどうしようもない部分ですよ。本作は「他の役者がまるで何事も無かったかのようにそのキャラクター演じている」のではなく、一応「別人になっているのにはこういう理由がある」という説明をしているだけ良心的に感じます。
多額の予算をつぎ込んだ大バジェットの映画ですので、それなりの面白さは担保されていると思います。少なくとも、「観て良かった」と思える映画には仕上がっています。
しかしながら、やはり一作目を観た時の衝撃には遠く及びません。現在はマーベルやDCなど、大バジェットの大迫力VFXアクション映画が多く生まれている時代ですので、本作のアクションがそれらと比べて「革新的」とは到底思えません。やはりキャストの年齢によるものなのか、ネオやトリニティのアクションはかなり控えめになっていたり、ハンドパワーによる超能力アクションがメインになってしまっている印象ですね。肉弾戦や派手なアクションは新キャラとして登場している若手キャストが引き受けているように見え、18年ぶりに観るネオは何だかショボく見えてしまいました。そこが非常に残念です。
ただ、『カイジ』とか『デスノート』とか、「過去に人気があった作品の続編を長い年月を経て映画化」みたいな映画がいくつもありますが、もれなく全部酷い映画だったんですよね。だから私は本作も全く期待していなかったんですが、不満点はありつつもそれなりに面白かったので私は満足しています。大絶賛しているレビュアーさんも結構いらっしゃいますが、それも十分納得できます。
観たことない方はぜひ観てみてほしいですね。