「正統なる続編」マトリックス レザレクションズ moivewatcherさんの映画レビュー(感想・評価)
正統なる続編
前半のメタ演出の連発は、笑っていいものかどうなのか、わからないまま、気づくと「実は本当に三部作はトーマス・アンダーソンの虚構というお話なのか?」と騙されそうになる。が、それは撒き餌。きちんと他の要素にも目を配っていると、実は全三部作を丁寧に踏襲した正統続編作品になっている。
裏切者イスカリオテのユダのシンボルたる黄色い服を着たモーフィアスは、
なるほど、確かにマシンサイドから見れば裏切者だった。
「ネオをシステムにつないでも安定しない。
トリニティを傍に配置したら上手くいった。」は、まるで
「何故かわからないけど動く」を経験したプログラマーなら苦笑してしまうかもしれない。
「新たな力が生まれる」という預言を残して去ったオラクル。
やはり再構築されていたマトリックス。
終盤、空を飛ぶのはトリニティだった。
つまり、今回の救世主はネオではなく、トリニティでした。というどんでん返しなのだが、観客は「ネオ=救世主」で20年も刷り込まれているものだから、すんなりと腹落ちしない。私も最初は「時代に倣った女性優位描写か?」と良く理解できていなかった。大変恥ずかしい。
思えばほかにも、鏡合わせのように、ネオ⇔トリニティを思わせる台詞、演出が多々存在していた。
「今度は僕が彼女を信じる番だ。」は、1でネオが覚醒するシーンを思い出す。
サティが読んでいたのは「鏡の国のアリス」。
リローデットのように現バージョンのマトリックスの仕様について、アーキテクトなりが丁寧に説明するというシークエンスがないものだから、分かり辛い。
が、上記が理解できれば、今回は本当に正統派の続編としてドラマに集中できるだろう。
ただ、アクションはややチープさが否めない。どんでん返しの肝も、上記の通り、ネオ→トリニティへと代替わりが起きた、というもので、これも各SNS等では予想されていた内容だ。
せめてもう5年早く、公開されていたら、もう少し高い評価を得られたと思う。
エンドロール後の小ネタも含めて、現代の映画製作、他のクリエイティブ業界が如何につらい状況かがひしひしと伝わってきた。
だが、個人的には同窓会のようで楽しかったし、マトリックスのみならず、他の映画にも、すべてのクリエイターにもぜひ頑張ってほしい。
過去作にあった不気味さや反骨精神はやや穏やかになり、
過去作にははない温かみがあった。