ドリームプランのレビュー・感想・評価
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ウィリアムズ姉妹の父
ウイリアムズ姉妹が登場したときは、誰も勝てないような気がしたほど、衝撃的だった。
一家は黒人が多く住んでいる地域に住んでいるが、父(ウィル・スミス)は5人の娘たちの才能を伸ばすことに人生をかけていた。
ヴィーナスとセリーナには天性の才能を感じ、いいコーチを見つけようと頑張る。
また、燃え尽き症候群を杞憂、テニス以外も手抜きなしに教えた。
スーパースターを育てるのは強い意志が必要みたい。
父親のエゴ
個人的にはスポーツには余り興味がないし、女子テニスは伊達公子で止まっている。
ウィリアムズ姉妹も名前は知っている程度でそれだから観たいと思ったわけではない。
マイノリティのマンディを乗り越えてアメリカンドリームを実現した、
そんな高揚感のあるストーリーを予告編からも期待していた。
だが、期待は大いに裏切られた。
こういう父親、スポ少なんかでもよく見かけるよね。
子供を叱る親にダメ出ししていたけれど五十歩百歩。
天上天下唯我独尊、手を差し伸べた人の好意も平気で踏みにじる。
観ていて胸くそ悪かった。
むしろヒロインとして姉妹中心に描き、
それを支える母、障壁となる父であるべきだったのでは?
観終えてそんな気がした。
子育て論
成功の裏話として充実の内容で、144分間という尺ながら終始楽しめた。父親の論をかなり丁寧に描いているし、その論には同意できる点もある。幼いままに社会に晒される危うさは事実であるし、この点についてはあらゆる分野で改善されたようにも思う。
とはいえ、親は子の成長をマネジメントする立場にはない訳で、基本的な方針には賛同しえない点も多い。2人は成功し、父の貢献は大きいとしても、果たせない子供も多くいるのが実情で、それをしてプランが悪いだとか金づるだとか言える訳ではない。逆効果も容易に起こりえるところ。夫婦喧嘩のシーンに集約されているが、結局は御せないし、子供がすることに過ぎない。
ジョンバーンサルだとは最後まで気付かなかった。これは名扮装。
本当にあったことなのだ。リアルなテニスシーンと心に響く家族の物語。
二人の娘をトッププロのテニスプレイヤーに育て上げるプランを実行・実現した父親、そして母親。家族の物語。しかも、全くテニス経験のない夫婦がそれを成し遂げる。
きちんと学校、勉強もさせ、宗教心を持ち、感謝を忘れない家族。人種差別を経験し、娘たちを守る父親。あまりにも現実離れのプランに、テニス指導者からは全く相手にされず。近所からは子どもへの対応を厳しく批判される。画一的かつ型にはまった学校教育を大きくかけ離れた、父親・母親の教育プランと実践。親が子を守る。プランが全て、うまくいかないのはプランがダメだから。
この映画の凄いところは、描かれていることが「本当に起こったこと」なのである。
ビーナスとセリーナの姉で製作総指揮のイシャ・プライスは、「作品の信憑性を確保するため、つまり私たちが何者か、確実に真実を映し出すために私が必ず参加するという条件を提示したの。」とある。
スポーツ伝記映画でこれほどまでリアルに再現している映画があるのだろうか。
徹底的にビーナス役のサナイヤ・シドニー、セリーナ役のデミ・シングルトンをテニスプレーヤーとして訓練し、代役も配置し、テニスシーンは「本物」となった。この子役たちは撮影前テニスの経験がなかったという。父親のウィル・スミス、母親のアーンジャニュー・エリスの配役もこれ以外にはないのではないか。
プランと実践、家族愛。とても心に響いた作品であった。
思ったより楽しめる作品だが…
実話をもとにした作品として、ウィルスミスの役作りのための増量など話題となっていましたが、予想以上に楽しめました。
ですが、個人的な感想としてウィルスミス演じる父親役の駆け引き感というか持論を押し通すスタイルが気に入らないので、そんなにオススメはしないです。ですが、信念を持って成功をおさめたサクセスストーリーとしては楽しめたのではないでしょうか。
2022 126本目
見事でした。ウィルはもちろんのこと姉妹を演じた子達も素晴らしかった。テニスには興味がなく名前しか知らなかったがそれでも面白かったです。
それだけにウィルのアカデミーでの事件とても残念です。これからのウィルの作品にも期待します
父ウイル・スミス
アカデミー賞でウィルスミスがクリスロックをビンタした件で、クリスロック支持の米に対し日本人はウィルスミス支持が多数派だった。
日本ではウィルスミスの行動に、か弱い女を守った男らしさ──男気を感じた人が多かったからだ。
ひろゆきがこの現象を解説していた。
要約すると──女が弱いから男が守らなければいけないという日本社会にある定論は一種の男女差別であり、また基本的に気分を害されたことで暴力にうったえたウィルスミスは短慮だった──とした。
日本では男性が女性を守るという構図が一般化している。だが男女平等ならば、侮辱されたスミス夫人自身が出てって仕返しをするのが合理だ。
女の人が劣っているから(保護対象だから)攻撃されたら男が代わりに仕返しをするのが日本では男女差別にならず美談になる。と、ひろゆきは批判したのだった。
たしかにあの事件の直後はウィルスミスの行動を「かっこいい」と言う輩が多かった。多かったというより溢れかえっていた。
かれの行動を「かっこいい」と評した人たちはひろゆきの言う男女差別主義者かもしれない。ただしそれが差別的であることにまったく気づいていないだろう。
おそらく「かっこいい」と支持した理由は自己アピールのようなものだ。ネット上で人の行動/言動を「かっこいい」と言うのは「それをかっこいいと見なせるかっこいいわたし」という意味。かわいいとおなじである。
わたしもスミス支持だが「かっこいい」とは(さらさら)思わなかった。それどころかウィルスミスのビンタは暴力ですらなかった。デモンストレーションだった。
ウィルスミスという人はカメラがとらえていないときでも劇的でエモーショナルな態度をとるタイプの人だ。かれの映画をいくつか見たらなんとなくそれがわかる。それはなんとなくだがこのリテラシーにはじぶんなりの自負がある。
つねに自己演出するタイプであり、かれの演技がうったえてくるのはそのためだ。アイアムレジェンドや幸せのちからや7つの贈り物やCollateral Beautyみたいな深い哀しみを背負った役はかれのように過剰な自意識がなければ表現できなかった。
したがってアカデミー賞でクリスロックがスミスの細君であるジェイダピンケットを侮辱したときも、かれにとってそれは「ワンシーン」だった。
かんぜんに外したが、スミスはおそらく演じただけだ。と、わたしは思っている。
スミスは髪の生えない病を患っている妻をGIジェーンだと揶揄された。だから、一矢報いる必要が生じた。リアクションしないわけにはいかなかった。娘のウィローだって母親に合わせて頭を丸刈りにしている。トレイ、ジェイデン、ウィローを含む家族全体の問題だ。で、とりあえず出ていってビンタした。ぜんぜん絵にならなかったけれどスミスはやらざるを得なかった。夫としてだけじゃなく父として見せなきゃいけなかった。
演技を商売にしている父のデモンストレーションだった。
けっきょくこの件で、言われなくてもいいことを言われ、やらなくてもいいことをやらざるを得なかったウィルスミスはかんぜんな被害者だった。しかも批判に晒され二次三次の被弾も浴び続けている。笑って話せるほど時間が経っても、かならずネタにされるだろう。
まったくどこにクリスロックを擁護する要素があるのかわからない。
よって個人的にはこの事件にたいする米日の温度差も、暴力うんぬんも、ひろゆきの概説も関係ない話だった。スミスは「ワンシーン」を演じただけだった。
この映画にもやはりスミスの自己演出のうまさがあらわれている。
哀しさを背負った気配がじょうずで、その哀しみの中には激しい感情が隠されている。言うなれば、激しい感情をおもてに出さずに、哀しみで表現する異能がウィルスミスにはある。
本編はこんなセリフではじまる。
『おれが育ったルイジアナではKKKから逃げるのに忙しくテニスをやる暇人は皆無だった、でも何かにきょうみを持つとおれは研究する、仕組みや世界一の人びとのやり方など、そうやって娘たちにも教えたんだ』
ウィリアムズ家はどん底のゲットーで生きている。そこでは一歩踏み外すと与太者になるか与太者に巻かれるしかない。
父リチャード(ウィルスミス)は黒人が生き抜くことの困難を知っている。ましてや成功をめざすならば、よっぽど抜け目なく渡らなきゃならない。その依怙地が、かれのドリームプランに強引や独善となってあらわれる。
だがリチャードは大切なことをわかっていた。
ビーナスがジュニアで優勝したとき、リチャードが娘たちにシンデレラを見せて、こう言った。
「だいじなのは彼女の謙虚さだ、人からひどく扱われても、見下されても、彼女は冷静で清らかな心のまま、謙虚だった。この先、試合で誰かと対戦するだろうが、謙虚になれないなら試合はなしだ」
ビーナスとセリーナ、ウィリアムズ家の物語にはシンデレラ曲線がある。
それを成し得たのは父リチャードがスポーツマンシップを理解していたからに他ならない。育成の初期段階で謙虚を教えるなら、たとえテニスプレイヤーで成功しなくとも、立身するだろう。そもそもかれのプランは忍耐/家族/教育の「人づくり」が前提になっていた。その賢さがこの映画にはあった。
(わが国の女子テニスプレイヤーのあのひとと比べたい欲求を抑えました)
また、父リチャードの人物像はスミスの実子トレイ/ジェイデン/ウィローにとって、ときどき妙に頑迷で熱くなりもする父ウィルスミスそのものではなかっただろうか。
King Richardはウィルスミスにとってこれ以上ないほどの嵌まり役だったと思う。
ただ、できればもうすこし尺を縮めたかった。
親父と娘たちと、家族一丸のキングプラン。…ウィルのカムバックプランは…?
ウィル・スミス、悲願のオスカー!
2015年、入魂熱演作『コンカッション』がノミネート落選し、“ホワイト・オスカー”を変えようと動き、現在のアカデミー賞の変革のきっかけになったというウィル。
そんな彼が遂に受賞を果たし、本来なら惜しみない称賛に包まれて然るべきなのだが…、
皆さんご存知の“アノ事件”。
これについては後々触れるとして、まずはひとまず置いて、作品の感想を。
スポーツにも疎い私だが、“ウィリアムズ姉妹”の名くらいは聞いた事ある。
全米屈指の女子テニスプレーヤー、ビーナスとセリーナの姉妹。
テニス史に残る輝かしいプレー、優勝歴、成績の数々。
生まれや育ちは貧しい。そんな彼女たちが如何にして見出だされ、アメリカン・ドリームを手にしたか。
彼女たちのサクセス・ストーリーであり、に非ず。
彼女たちを育て鍛えた、これはほぼほぼ父リチャードの話。
子供の才能にいち早く気付くのは、やはり身内が多い。
同じ女子テニスで、シャラポワもそう。娘の才能に気付いた父が、レッスン代やコーチ代を仕事を幾つも掛け持ちして稼ぎ、それに応えるようにシャラポワは訓練に励み、メキメキ上達。栄えある大会で遂に優勝し、彼女が真っ先に駆け寄り抱き締めたのは、自分を信じ尽力してくれた父。
何かの番組で紹介され、感動したのを覚えている。
このウィリアムズ親子もきっと…。
確かに家族の感動のサクセスとアメリカン・ドリームなんだけど、ちょっと違う。
親父が“星一徹”といい勝負。
テニスの専門知識はナシ。専門書や試合のビデオなどを見て、独学。
それで娘たちにレッスン。娘たちにそもそも才能あったのか、親父の指導の賜物か、才能がどんどん開花していくのだから、どちらにせよ大したもんだ。
プレーだけではなく、しっかり勉強も両立させる。人としての礼儀も。
子供はこの二人を含め計5人。妻オラシーンも協力し、家族一丸でテニスの世界で勝利する。
それはただの夢や目標ではない。そう確信する自信と、リチャードがしっかり道筋立てた“プラン”によって実現出来る自分の人生。
これだけなら立派な親父。人格者。ところが…
とにかく、面倒臭い性格で、でしゃばり。
娘たちのコーチを探す為に、アポも取らず、突撃訪問&直談判。
しかもこちらの要望だけを猛アプローチ。推して推して、推しまくる!
レッスンやコーチ代は無料で。娘たちがプロになってからの出世後払い。
娘たちには謙虚であれと厳しく躾るが、当の本人は相手が誰であろうと対等に。媚びも物怖じもせず。相手が無礼な言動を見せたら、こっちもそれ相応の対応を。
娘たちへのレッスンはなかなかスパルタ。雨の中でも訓練。そのせいで仲の悪い近所から通報やトラブルしょっちゅう。
特に彼の言動の最たるは、レッスン中。説き伏せて名コーチに娘たちを見て貰う事が出来たのに、レッスン中も口出し。果てはコーチと言い合いになるほど。
やっと見つけたコーチに、あんたのやり方は間違ってる。俺が正しい!
娘たちのプレースタイルや練習や試合もこちらで管理。
じゃあ、何故コーチを雇った…?
あまりの俺様主導に、ちとゲンナリ…。
それだけ熱い男という事でもある。
娘たちの為なら、一切妥協しない。
周りがギャーギャー言うのなら、言えばいい。ほざいてろ!
彼の原動力。
何よりも、家族を守る。
幼い頃、大人たちに暴行受けた時、父は助けてくれなかった。
ああはなりたくない。俺は家族を守る。
そして、社会からも。
白人たちの差別、偏見。白人たちのスポーツの世界に、黒人が飛び込んでいく。
負けてたまるか。屈してなるものか。
白人からだけの迫害ではない。
治安の悪い地元。同じ黒人のヤンキーが絡んでくる。
娘たちにちょっかい。リチャードには暴力まで…。
さすがに忍耐の限界を突破したリチャード。こちらも“暴力”で対抗しようとした時、彼の目の前でヤンキーの一人が…。社会の不条理、残酷。…いや、これが現実。
リチャードは一見面倒臭そうだが、多くと闘い、最も大切なものを守っているのだ。
リチャードを美化するだけの作品ではない。
時に彼の行き過ぎた言動を問い掛ける。
コーチからのアドバイスを無視し、勝手に娘たちの訓練のスケジュールや試合すら放棄する。誰もが通るジュニア世界すらパス。
ありきたりの道を進ませ、ありきたりのオチにさせたくない。俺の娘たちは特別。
確固たる意思だが、頑固高慢でもある。
要は、人の話を聞かない。
それが原因でコーチや娘たち、妻と度々衝突。
娘たちを思ってるように見えて、実は自分の強欲。
自分がただ周り負けたくないから。
娘たちは父親の言う事を聞く事が多い。コーチはたじたじ。
面と向かって言えるのは、妻だけ。
お互い一歩も引けを取らず、同じくらい家族の事を思ってるので、夫婦喧嘩は迫真。
それだけ腹を割って言い合える夫婦であるという事でもある。
時々やり過ぎ言い過ぎとも思うが、リチャードが強い信念を持った男というのに異論はない。
テニスだけじゃなく、勉強や人としての在り方を何より怠らせない教育は素晴らしいと思う。
家族への思いや愛が熱いからこそ、厳しくもなるのだ。DVのような抑えつけとはまるで違う。
自分や家族に厳しく、他人にも厳しい。
白人エージェントやオーナーのちょっとした言い回し。
あなたの娘たちは、信じられないほど凄い。
誉めてるようだが、偏見的な言い方でもある。
“信じられない”とは、信じてなかった者が信じ難いものを見せた時に言う。つまりは白人のコイツらは、黒人の娘たちの事を信じても期待してもなかったという事でもある。白人の娘にはそんな事言うだろうか…?
そんな奴らに、俺の娘たちを任せられない。
響く台詞もあった。
破天荒な親父だが、いつしか魅せられていた。
ウィル・スミス、キャリアベストの名演!
一筋縄ではいかないキャラ、苦渋の体現、熱い愛情深さ…。
元々はミュージシャン。映画の世界に入り、大人気スターへ。エンターテイナーであり、ハリウッドを代表する演技派に。『バッドボーイズ』でウィルを認識して、今回のオスカー受賞に至るまでずっと見てきて、とても感慨深い。
妻役アーンジャニュー・エリスの好助演。時々暴走する夫を押し留める、ウィルに引けを取らないパワフルな見せ場も多々。
ビーナスとセリーナを演じたサナイヤ・シドニーとデミ・シングルトンはトレーニングを積み、リアルな試合も披露。ひょっとしたら一番の難役かもしれない。
家族で歩み始め、ビーナスのプロデビュー。
遂にここまで辿り着いた。ここまで来た。
ここに来るまでどれほどの苦難があったか…。
それに比べたら。取るに足らない。
とことん楽しみ、やり抜き、自分の実力と自信を見せきるだけ。
高額オファーなんて後から。まずは、実力を魅せる!
自信と期待は間違いではなかった。
信じられないではない。信じていた。
怒涛の快進撃。
…が、本作は実話。最後は周知の通り。
悔しいのは悔しい。
だけど、自分を責める事はない。
家族が、皆が、誇りに思っている。
試合はまだ、始まったばかりだ。
家族一丸となっての名プレー。
娘たちの、リチャードの、家族の勝利。
キングプラン。
さて、アノ事件。
キャリアベストの名演を魅せ、栄えある賞にも輝いた矢先、まさかの崖っぷち…。
ウィルのキャリアに大きな傷が付いた事は確かだが、これでウィルのキャリアが終わり…になんてなって欲しくない。
暴力に出てしまったウィルの行動を肯定は出来ない。
劇中で、暴力に耐え、暴力に出ようとして別の暴力を目の当たりにして、思い留まるシーンがあるのに、何と言う皮肉…。
暴力はいけない。それが行き過ぎれば、強大な力で他者を攻撃し、支配にも繋がる。
あの時、別の手段は無かったのだろうか…?
ならば、言葉の暴力はどうなのだろう…?
知らなかったとは言え、持ち前のブラック・ジョークとは言え、他者の容姿をコケにし、貶めるのは、手を出すのと同じくらいの暴力だと思っている。
自分や周りは面白いかもしれないが、言われた本人の気持ちを少しでも考えた事あるだろうか…?
ジョークなんだから、笑って流してよ…ってか?
アカデミー賞会員を辞し、今後10年アカデミー賞への出席も禁じられたウィル。せっかくオスカーに輝いたのに、今後暫くはノミネートも難しいだろう。それどころか、ウィルを逮捕すべきだとか、ウィル批判の声は厳しい。
それに対し、あんなアクシデントにも関わらず、滞りなくプレゼンターを務めたクリス・ロックには、寧ろ称賛の声が寄せられているとか。
劇中さながら家族を守る為暴力に出てしまったウィルを全面的に擁護は出来ないが、ウィルがこれだけ罰を食らってるのに、元々の発端、礼儀に欠けた発言をしたクリス・ロックには何のお咎めナシというのが納得出来ない。双方、痛み分けならまだしも…。
これも日本的な感情とアメリカ社会の文化や価値観の違いなのだろうか…?
いずれにせよ、何とも後味の悪い一件であった…。
看板に偽りアリ?
まず『ドリームプラン』という邦題に物申したい。何故なら、本作は、娘たちをトップ・プレーヤーにするための「プラン」に焦点をあわせた物語ではなく、『King Richard』という原題が示すとおり、まさに、あのクセの強いオヤジの生き方にフォーカスした物語だからです。ただし原題をそのまま邦題にしてもお客さんは入らないだろう。それはわかります。でも『ドリームプラン』というタイトルは、映画の内容からちょっと乖離しているんじゃないですか? と配給会社(あるいは邦題を付けた人)に訴えたい。
ま、それはともかく、リチャードは本当に強烈な個性のオヤジですね。激しすぎる自己主張、押しの強さ、独善的な態度。常識では考えられないような振る舞いも少なくない。そしてあまりの無礼さに僕も何度も引いてしまいました。よくそれで娘たちに「謙虚さ」を学べとか言えるな、とツッコミたくなった。日本でなら尚更こんな人には風当たりがキツイでしょうね。日本ではこんな人は生きていけないのではないのでしょうか。というか、そもそも協調や遠慮を美徳とするわが国では、リチャードのような人は現れないのかもしれません(某ボクシング三兄弟の父親のことをちょっと思い出しましたが)。
リチャードの成功への執念と、娘たちを頂点へ導くための情熱の裏側にあるものは、人種差別から来る、強烈なコンプレックスや被害者意識です。繰り返しになりますが、この映画が描きたかったのは、やはり成功のための「プラン」などではなく、リチャードという強い個性を持った男の生き方なのです。そして、彼のパーソナリティーと生き方を通して、その背後にある、人種差別という社会問題や、そこから生じる貧富の差、またそういう社会で生きざるを得なかった人間の姿などをあぶり出すことがこの作品の本旨なのだと僕はとらえています。アメリカにおける人種問題は、日本人の我々には容易には理解し得ないところがありますが、いろいろと考えさせられました。
というわけで、最後に全体を通しての作品の感想を述べます。
何しろネタ(素材)は最高、「人生大逆転」の実話に基づいた話だから面白くて当たり前ですが、映画としてはとくにこれといった工夫や表現もなく、フツーの出来だと思いました。上映時間も、もう少し短くてもよかったのではないでしょうか。
脇を固めたすべてのキャストも素晴らしい
アメリカンドリームを絵に描いたような作品。リメイクされてアカデミー作品賞をとった「コーダあいのうた」も凄く良かったけど、個人的にはこちらのメッセージ的にも心に響いた。主役のウィルスミスも含め、脇を固めたすべてのキャストが絶妙だと思う。ただ実話ながら強いエンタテインメント作品にもなったことがアカデミー作品賞的にはポイントを下げてしまったか。
歴史的事件の発端となった作品もまた素晴らしい哉
女子テニス界で一時代を築いたビーナス、セリーナ・ウィリアムス姉妹のお父さんの話です。お父さんはちょっと変わり者。有名コーチの教え方が自分の考えと異なるときには臆せずに堂々と主張し、ジュニアで活躍してからプロに転向するのが王道であっても、信念に基づいてジュニアの試合には出場させない。こうしたアクの強い人は成功すると物語になるが、身近で一緒に働く人はストレスがあるだろう。Steve Jobsさんなども同じ感じだと思う。
お父さんはエホバの証人の信者であるように描かれていました。真偽はわかりませんが、恐らく本当なのでしょう。その教えの影響なのか、人としての正しいふるまいを熱意をもって教えていたのが印象的でした。これがきっかけになってエホバの証人の信者が増えたらそれは微妙ですが。
セリーナの話も描いて欲しいです。活躍する姉の陰で抱えたストレスもあったでしょう。それをはねのけて伝説になったのはまさしく物語。アカデミー賞授賞式では歴史に残る事件を起こしたウィル・スミスですが、主演男優賞にふさわしい演技でした。
2本立て2本目。すごい親もいたもんだ、なかなかの衝撃。 納得できる...
2本立て2本目。すごい親もいたもんだ、なかなかの衝撃。
納得できるところもあるが、その独善的な言動に驚愕もする。黒人独特の環境ゆえなのか、考えさせられた。
ビンタ事件がとかく注目されているウィルだが、私には彼が演じるこのウィリアムズ姉妹の父の方が事件。
今回はビーナスが中心だったが、なんならセリーナ編も見てみたい気がする。
いいスナップのビンタ
いい父親役に定評のあるウィルスミスが、
なぜリチャードを題材にしたか?
(成功者ではあるが、そんな崇高な人物でもない)
人種差別の底辺から這い上がってアメリカンドリームを実現させたサクセスストーリーにはうってつけだったか。
原題も「キングリチャード」だもんな。
若い頃最初の結婚して5人の子を捨てて、
本作品の2番目妻オラシーンと結婚するも、これも破局、3人目の妻との間に子を成し、この妻とも別れている。まさにキング。
まぁ姉妹のテニス話なので、この辺はバッサリだが。
本編のあともいろいろエピソードがあるので「キングリチャード」とするなら後日談か続編がほしいところ。
感動しかない
全くテニスに詳しくなく、セリーヌとヴィーナスのプレーもみたことがなかったが、映画をみて父の想い、親子の絆に涙がでた。感動のあまり、3日後に2回目を観に行き、また涙。友達、知り合いにもおすすめした!たくさんのひとに見てほしい映画。俳優がみな良かった!
アカデミー賞授賞式のハプニングで、ある意味映画史に名を残すことになった一作。
念願のアカデミー賞を獲得したにもかかわらず、自らの振る舞いで手放しに喜べなくなってしまったものの、本作のウィル・スミスの演技そのものは最優秀男優に相応しい熱演でした。
稀代のテニスプレイヤー姉妹を育て上げた手腕を持ちつつも、しばしば配偶者にも暴力を振るうという(映画では直接的な描写はないけど)、家庭人としては問題を抱えてきた父親、という硬軟両面で説得力ある演技を要求される役どころでしたが、ウィル・スミスは「華」のある自らの俳優としての存在感を封じて、「キング・リチャード(原題)」そのものを演じ切りました。リチャードが「ドリームプラン」に何を書いたのかを詳らかにするよりも、実際の指導や試合結果でその内容を理解させるという演出の手際の良さのおかげで、作品全体の疾走感が最後まで衰えません。何らかの文書が作品の要点となる場合、そこに「書かれていること」をナレーションなどでいちいち説明する演出方法を採用する作品も結構ありますが、丁寧な描写がしばしば演出のもたつきをもたらしてしまいます。本作ではそのような場面はほぼ見られませんでした。
本作を観ると、リチャードは周囲の無理解を意に介さず、自分の信念を貫き、結果的に大きな成功を収めた人物であるかのように描かれますが、現実の彼はその後家族と離別、本作の製作についてもほとんどリチャード本人の意思確認をせず進められたそうで…。加えて、作品の父親像の構築に、セリーナ&ビーナスのウィリアムズ姉妹をはじめとした親族の意見が大きく採り上げられているというところも何だか複雑な気分になります。
それにしても、そのリチャード本人に「暴力は良くないね」って言われるウィル・スミス。彼の立つ瀬が…。
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