劇場公開日 2022年2月23日

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「看板に偽りアリ?」ドリームプラン pekeさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0看板に偽りアリ?

2022年6月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

まず『ドリームプラン』という邦題に物申したい。何故なら、本作は、娘たちをトップ・プレーヤーにするための「プラン」に焦点をあわせた物語ではなく、『King Richard』という原題が示すとおり、まさに、あのクセの強いオヤジの生き方にフォーカスした物語だからです。ただし原題をそのまま邦題にしてもお客さんは入らないだろう。それはわかります。でも『ドリームプラン』というタイトルは、映画の内容からちょっと乖離しているんじゃないですか? と配給会社(あるいは邦題を付けた人)に訴えたい。

ま、それはともかく、リチャードは本当に強烈な個性のオヤジですね。激しすぎる自己主張、押しの強さ、独善的な態度。常識では考えられないような振る舞いも少なくない。そしてあまりの無礼さに僕も何度も引いてしまいました。よくそれで娘たちに「謙虚さ」を学べとか言えるな、とツッコミたくなった。日本でなら尚更こんな人には風当たりがキツイでしょうね。日本ではこんな人は生きていけないのではないのでしょうか。というか、そもそも協調や遠慮を美徳とするわが国では、リチャードのような人は現れないのかもしれません(某ボクシング三兄弟の父親のことをちょっと思い出しましたが)。

リチャードの成功への執念と、娘たちを頂点へ導くための情熱の裏側にあるものは、人種差別から来る、強烈なコンプレックスや被害者意識です。繰り返しになりますが、この映画が描きたかったのは、やはり成功のための「プラン」などではなく、リチャードという強い個性を持った男の生き方なのです。そして、彼のパーソナリティーと生き方を通して、その背後にある、人種差別という社会問題や、そこから生じる貧富の差、またそういう社会で生きざるを得なかった人間の姿などをあぶり出すことがこの作品の本旨なのだと僕はとらえています。アメリカにおける人種問題は、日本人の我々には容易には理解し得ないところがありますが、いろいろと考えさせられました。

というわけで、最後に全体を通しての作品の感想を述べます。
何しろネタ(素材)は最高、「人生大逆転」の実話に基づいた話だから面白くて当たり前ですが、映画としてはとくにこれといった工夫や表現もなく、フツーの出来だと思いました。上映時間も、もう少し短くてもよかったのではないでしょうか。

peke