「コンプトンの"星一徹"はいわゆるスパルタ親父ではない」ドリームプラン 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
コンプトンの"星一徹"はいわゆるスパルタ親父ではない
ヴィーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹をテニス界のトッププレーヤーに押し上げた実の父親、リチャードの教育法は、いわゆるスパルタとは違う。未来のスター選手を育てるテニススクールではなく、一家が住まうアメリカで最も危険な街と言われるL.A.のコンプトンの公営テニスコートで練習を積み、姉妹の才能をいち早く見抜いたコーチとの契約を高額を理由に断り、やがて、テニススクールに入門後も学業を優先させ、若くしてプロ契約を結ぶことを拒否する。早過ぎるプロデビューが才能を台無しにしてしまう例を見てきたからだ。
そんなリチャードに興味を持ったウィル・スミスが主役を演じ、製作に妻のジェイダ・ピンケット・スミスやヴィーナス&セリーナ姉妹が名を連ねる人物伝は、リチャードの負の部分を意図的に覆い隠している可能性はある。でも、スポーツの才能がある幼い子供たちをビジネスの道具にしたり、国威高揚の手段に使うような価値観が罷り通るような今の世の中で、コンプトンが生んだ"星一徹"の姿は見る側の心を清々しくしてくれることは確かだ。
そういう意味で、今見るべきなのはコレ。実物そっくりの役作りで初のオスカーを狙うウィル・スミスの本気を確認する意味でも。
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