「主人公ポールが自分のなすべき事に気づき変わっていく話」DUNE デューン 砂の惑星 葵須さんの映画レビュー(感想・評価)
主人公ポールが自分のなすべき事に気づき変わっていく話
2021年公開当時は興味はありつつも自分の耳にはあまりいい評価は入ってこなかったので見逃していた。それを最近またおすすめされて視聴した。
率直な感想はというと、悪くなかったという事と、映画館の大画面で見たかったという事が言える。悪くなかったというのは、話の内容がSF設定の説明や描写に終始するのではなく、話の中で足掻き進もうとする主人公への共感の誘引が視聴者である自分にもうまく引っかかっており没入できたということ。大画面で見たかったというのは砂の惑星の地形とサンドワームの大口を画面いっぱいに見たかったということだ。
内容について触れると、作品を見ていて主人公ポールがときおり遭遇するインスピレーションや、デューンに降り立った主人公を見て囁く原住民達による、ポールが救世主かもしれないことへの希望と不安の描写、話が進むに連れて自分がどうすべきかを運命に委ね、自ら意図し進むことを決意するポールの姿に対してAwakening(覚醒)という言葉とマトリックス一作目に似た救世主覚醒の話という印象を得た。
救世主の物語について今作を見ながら思ったのは、視聴者に対して己が世界を変えうるという勇気を幻覚的な予言や信仰的な表現で主人公に感情移入した視聴者に与えうるという意味で、それは妄想の中での変えられないリアル(現実)からのガス抜きという事実もありながら悪くないテーマだよなと再確認した。
SF的設定で印象に残ったのはトンボ型の飛行機やスパイドローンのようなもの、デューンで汗を飲料水として貯めることができるスーツ等、それぞれが砂の惑星の環境で自然に表現されていて統一感を感じた。着用者の体表面に生じるバリア発生機については別に悪くない設定だが、映像の中で青い影がブレる表現には違和感を感じた。その描写のブレが目立ちすぎるところに違和感を感じたわけで、ならどうしたらより自然なバリア表現になるのかは不明だ。