「【遂に登場!歴史的超大作SF"予告"映画DUNE 】」DUNE デューン 砂の惑星 山のトンネルさんの映画レビュー(感想・評価)
【遂に登場!歴史的超大作SF"予告"映画DUNE 】
一言で言うと「凄まじく完成度の高い、盛大な予告映画」である。この映画だけでは評価できないので、続編に期待したいところ。
〜初感〜
娯楽として楽しむ作品というより、現代の映像技術によって再現されたDUNEの世界観、及び映像と音響が醸し出す古典的な雰囲気を味わう作品。喩えるなら、日常的に飲む安いワインというより、年代物のヴィンテージワインを口にする感じ。そういった性質があるからこそ、改めて本作を映画館で鑑賞して良かったと思える。それぞれのワインに合うチーズがあるように、この映画を鑑賞する場として映画館は適していたと思った次第である。
映画全体においてここまで明度が低い色彩(茶色と灰色)を扱いつつ、部族的・民謡的な音楽を使用し、そこに重低音による音圧を組み合わせるという尖った演出。舞台の都合上、色味に任せた派手な演出ができない中で、芸術的なまでに美しい映像と音響表現を施したドゥニ・ヴィルヌーヴ監督にただただ脱帽した。冒頭のエピグラフに「夢は深淵からのメッセージだ」とあるが、この映画自体が夢を見ているかのようであり、この映画が含むメッセージをどのように受け取るかは、人それぞれ違うのだろう。皆さんはどのようなメッセージを受け取りましたか?
〜DUNEという映画を取り巻く歴史的な背景、他作品への影響〜
原作は1965年に刊行されたSF小説『DUNE』。
これを1968年に映画化しようと試みたポドルフスキー。当時、映像化はできなかったものの彼によって書かれた資料が後のSF映画に与えた影響は数知れず…また原作は『スターウォーズ』『風の谷のナウシカ』にもインスピレーションを与えたという。本作『DUNE/砂の惑星』の映像化に至るまでに原作が与えた影響、映像化に関する歴史的な背景があまりにも厚みを増しており、純粋に作品単体として良し悪しを評価できなくなっていると感じる。研究対象になり得る作品とでも言えばいいのだろうか…
〜音響について〜
圧巻の音響。鑑賞後に言葉の出てくる洋楽、邦楽を聞きたいとは思えなくなった。というわけで、シュトラウスの『英雄の生涯』という曲を聴いて帰りました。
〜映像の色彩について〜
茶色と灰色ばかりの世界をよく描いな。
映画の中の色彩の好みがわかった。もっと鮮やかなのが好き。服の色彩も意外と大事。
〜独特の映画体験〜
◎冒頭の始まり方が独特
通常の映画であれば、ワーナーとレジェンダリーのロゴが出る前に、エピグラフが入らないし、劇中のサウンドが前置きなくいきなり始まらないと思う。今作は「夢は深淵からのメッセージだ」のエピグラフから始まり、ワーナーのロゴも映像に溶け込んでいる。ロゴから既に映画が始まったかのような感覚。
前半は眠くなったが、それすらも演出だったのではないかと思わされる。まるで、後半は夢の世界にいたかのような没入感だった。特に、アトレイデス家が襲われてからの脱出からは目が離せなかった。
もう一度見たいと思うというより、もう一度見ねばと思わせてくれる作品。一回見ただけでは物語の全容を把握し切ることが難しい。登場人物たちの思惑が渦巻きすぎて、誰目線で物語を見るかによって役者の表情が意味する非言語的なメッセージを受け取りきれない。
〜感情移入について〜
キャラクターの掘り下げや育ってきた環境については鑑賞者の予備知識に委ねられており、映画の中では深掘りされないため、兄貴的な存在であるダンカンが死んだシーンで泣くことができなかった。とはいえ、人物の背景を事細かに描いていたら、何時間かかるんだという作品のため、泣ける映画として捉えない方が無難に楽しめる。
〜SF映画というジャンルについて〜
さて、皆さんは、「SF」というジャンルに対して何をイメージするだろうか?
・高度に発達した人工知能
・人間の遺伝子を改変した生物たち
・超次元的なロボット
〜映画館での個人的な教訓〜
◎コンタクトで映画は見ないこと▷目が乾く
◎予習とネタバレについて
予習のし過ぎも考えものである。特に、映画を鑑賞済みのYoutuberが「ネタバレなし」といいつつ出す用語解説動画は気をつけたいところ。彼らは鑑賞したが故に、無意識のうちにネタバレに近いことをポロッと吐き出すことがある。これは、資金力・労働力の制約などの要因から自身の動画がネタバレになっているかどうかを吟味できていないことにも由来する。つまり、大半のYoutuberは論文の査読と違い、自身の動画の校閲を十分にしているとは言えないのである。特に、「動画の再生数」や「チャンネル登録者数」を増やすためにホットな映画を扱いたいという目的のYoutuberの場合、見る人への配慮が足りないということが多い印象を受ける。おそらく、本人も自分がネタバレ発言をしていることは意識していないのかもしれない。しかし、これから鑑賞する人にとっては見る意欲を削ぎかねない。
ネタバレに関して別の見方をすると、A君にとってネタバレでないことが、B君にとってはネタバレになるということもある。ここでわかることとしては、ネタバレの許容範囲には個人差があるということだ。これは、ストーリーの大まかな流れを説明することが、ある人にとってはネタバレになりうるということだ。自分がどんな情報をネタバレと感じるかどうかは、映画に限らず多くのコンテンツを見る前に把握しておきたいところである。
そのため、予習をする際は①自分のネタバレの許容範囲を知っている友人からの解説、②映画公開前の用語解説動画、③公式サイトの用語解説サイト、あるいは妥協点として④原作のみを読んだ人の解説にとどめておく方が良いだろう。自分は予習をし過ぎて、このPART1の映画がどんな幕切れをするのか知ってしまい結構萎えた。
◎自身初となるヴィルヌーヴ監督映画を鑑賞
『メッセージ』『ブレードランナー2049』も見てみたいと思った。
◎SFの醍醐味とでもいうべき、現実世界とは全く格別した世界観が楽しめる
そして、この映画に登場する役者たちは実際に住んでいるかのような生感がある。
◎映画に合わせて刊行された新訳版の『デューン/砂の惑星』を読みたくなる。
◎砂漠における過酷さ、水の大切さに対する描写が少ない。
> 自分は予習をし過ぎて、このPART1の映画がどんな幕切れをするのか知ってしまい結構萎えた
自分のレビューもこの映画に関しては結構書いたので、上記の悲しい事態の原因の一つになってしまっていたら、ごめんなさい。