「絵画的であり、詩的であるSF。」DUNE デューン 砂の惑星 侍味さんの映画レビュー(感想・評価)
絵画的であり、詩的であるSF。
かつてホドロフスキーがデューンを計画していた頃は、皇帝の世界観がギーガー、メビウスが宇宙船のデザイン、ミックジャガーにダリ皇帝などと絢爛豪華なピースで10時間の大作だった。
リンチ版でややコンパクトになったものの、異界の星の雰囲気は語り継がれ、そしてその間の幾多の子孫(SF映画として)を経て、本家の登場となったのだが、描き尽くされた現代での最新版デューンの存在価値は、そのSFの世界観の持つ、絵画的、詩的な要素を描き切った監督の手腕による所が多い。
海岸で立ち去るポールを背景に、巨大なアトレイデス家の艦隊が海面より浮き上がる。
その絵画的なシーンは、美しさもさる事ながら、強大で勢力を伸ばしているアトレイデス家を描き切っており、同時にその無機質な描き方で、これから起こるであろう悲劇を予感させていてとても美しい。
今回の映画ではその情報量の多くが語られないため、観る側の解釈に委ねられるところも多く、人によっては断片的で理解不能と、この作品に対する拒絶反応が出ていると思う。
監督の前作のブレードランナー2049を観て、その作風に親和性があれば、今作はとても分かりやすく、感情も揺さぶられるものだと思う。
小説よりもくどい回数で描かれる予知夢の点と点が繋がる物語の終盤でこの作品は終わる。
彼女の言う通り、始まり、である。
雄大でまるでこの星の神の存在であるかの様に描かれている砂虫は、後にナウシカで描かれた王蟲のそれと同じだし、数多くのシーンが既視感に包まれているものの、今作は重厚なサントラを添えるハンスジマーの手腕もあり、今作はとても息が詰まるような重力の下で2時間越えの長丁場を走り切る。
昨今のDC、マーベルの主要役者達が一堂に揃い、レジェンダリー製作でありながら、中国の要素は控えめな今作が無事、美しい形で産まれて来た事に感謝しかない。
p.s. Tジョイ系で今作フューチャーの「スパイス味ポップコーン」を食べたのですが、想像を絶する普通さで悲しかったです。