「シンプルなビジュアルデザインと広大IMAXスクリーンに照らされる、スペクタル貴種流離譚の序章だが、シャラメくんが凛々しい」DUNE デューン 砂の惑星 ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
シンプルなビジュアルデザインと広大IMAXスクリーンに照らされる、スペクタル貴種流離譚の序章だが、シャラメくんが凛々しい
昔デビッド・リンチ版のデューンのビデオが何故か家にあったので、何回となく観た作品だが原作は未読。(原作に詳しい人によると割と忠実な作品らしい)
ちなみにリンチ版はクセの強くてアクションもスペクタルも弱く(リンチがその部分に興味ないからか?)ダイジェスト版的作品だが割と好き。
結論は、現在日本に2カ所しかない正方形に近いフルサイズIMAXスクリーンで観るのが、もっとも効果的な秀作だと思う。
監督もそのつもりで製作した発言しており、個人的には横長画面が当たり前の今だが、人物ドラマなどは正方形に近いスタンダードサイズの方が適していると思うので多種多様なフレームサイズに対応できるフルサイズ型IMAXスクリーンの映画館が増えるのを期待する。
スマホやタブレットで観る映画とは違う付加価値にもなるので。
映画全体もシンプルなビジュアル・デザインととても美しい撮影とシンプルでゆったり感がある進行だが、アクションやスペクタルの盛り込まれて要所要所てキレもあり2時間半を楽しめる。
ロシア映画の映像詩人アンドレイ・タルコフスキーの映像を想定させた雰囲気を持ちながら、テンポや音楽は今の映画と観客に、分かりやすく見せたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の前作『ブレードランナー2049』を更に発展させた語り口で、しっかりと骨太で壮大なドラマに落とし込んでいる。
美術や衣装などはシンプルだが、美しい照明や舞台効果によってリアリティもありリンチ版のバロック調とは違う世界観を見せてくれる。
正直本作の予告編を見た時は、絵面が地味かな?思っていたところは、凝って毒毒しい装飾美術よりシンプルデザインや人物などを正方形に近い画面フォーマットの時に空間を際立たせて砂の惑星以外での空や海や雨などの静粛さに貢献して人物やストーリーに目を向けて注視できる。
主役のポールを演じるティモシー・シャラメは、気品を感じさせる立ち姿と凛々しい表情で、アクションもこなしてハマり役!旬な役者のシズル感を出しながら、悲劇的序曲を駆け抜ける。(歩き方に特徴があると田中宗一郎氏が指摘していたが三人で並んてくる場面で確認できた)
その他には母親役のレベッカ・ジェファーソンの美しさやちょっと若い頃のセガールに似てきたジェイソン・モモアの頼りになるカッコ良さなども良かったが、義母役のシャーロック・ランプリングの風格ある姿も印象的。
気になるところはあまりなくちゃんとpart2が製作されるのかな?な感じ。
原作の細かい設定などは特に説明されずに、作劇の進行で何となく理解できる作りだが、全体的シンプルな貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)で、ストーリー的サプライズは少ないが、IMAXフォーマットを現時点で最大限に使った映画館で観る映画としての記念碑的作品としてオススメできる。
フルサイズIMAXフォーマットでの感想なので地方の方が体験して観るのに厳しい側面があり申し訳ないレビューになってしまったが、この作品がヒットする事で、フルサイズIMAXが普及する事を願う。
「シャラメくんの思い出」
コロナ以前の池袋の名画座にて、マニア向け作品を鑑賞後に場内を出ると、名画座には見られないオシャレな女子(袖の膨らんだワンピースなど、昔の少女漫画みたいな服装も!)が多数オールナイト上映に並んていたのでビックリしたが、その時はシャラメくんの特集オールナイト上映でした。
普段の名画座の客層は自分も含め多数の映画マニアのオッサンや爺さんが、ブツブツひとりごとを言いながらマウントする為に蠢く場所なので、彼女達のシャラメくん命でハツラツとしたオーラに、自分はいたたまれなく早足で劇場を去った事を思い出す。