「目を見張る大傑作」DUNE デューン 砂の惑星 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
目を見張る大傑作
字幕版を鑑賞。1960 年代にフランク・ハーバートが著した「デューン/砂の惑星」は、6部作という大作ながら未完に終わった SF 小説である。壮大な世界観と数々の未知の乗り物や住居、特殊な生き物などが登場することから、映像化不可能と言われていたが、「エレファント・マン」などで知られるデビッド・リンチ監督が 1984 年に映画化している。だが、この壮大な話を1本の映画に詰め込んでしまったために、ほとんどあらすじを映像化しただけのようになってしまい、監督自身が自作のリストに入れないでくれと言ったと伝わるほど気に入らなかったようで、興行的にも成功とは言い難かった。
本作は全2部構成で想定されているとの話で、前編に当たっているらしい。独特な世界観の説明だけでも大変なのに、多数の登場人物をキャラ立ちさせなければならない訳であるが、見事にやり遂げたと言うべきであろう。砂虫という凶悪な生き物の造形や動きの迫力も凄まじく、羽を羽ばたかせて飛行するヘリ型の乗り物もリアリティが高かった。惜しむらくは、羽ばたき式の乗り物では、機体の上下動が避けられないはずなのだが、機体は微動だにしておらず、あたかもモスラの飛行のような不自然さが感じられたことである。
宇宙には皇帝がいて、人が住める惑星に領主を置いて統治させるという設定はスターウォーズのようであるが、むしろスターウォーズの方が影響を受けたというべきである。フォースは出て来ないが、言葉で他人を自由に操れる特殊能力というのが出て来る。その見せ方も非常に秀逸である。砂漠で貴重なのは水分であって、水分が金より重要な物質として表現されているのは、今で言う環境危機という概念を先取りしていたためである。ただ、争って奪い合っているのが香料というのがちょっとリアリティを欠いていた。原油のようなエネルギー源となる物質の方が説得力が高かったはずである。
惑星の統治権を持つ主人公の一家は、巨大な砂虫サンドワームが支配する荒涼とした砂の惑星アラキス(通称デューン)に移住して、宇宙を支配する力を持つメランジという香料の採掘を命じられ、そこに皇帝が派遣した大部隊が攻撃して来るのだが、その理由があまり丁寧には説明されていないのがやや物足りなかった。一方、主人公だけの持つ特殊能力が今後物語のキーとなっていくので、その描写は丁寧に行われている。また、個人ごとに水の循環を行える特殊スーツは、デザインも傑作であったと思う。
映像作りには非常に力が篭っていて、「映像化不可能」というハードルの高さに真正面から挑んでいるような清々しさを感じた。役者も熱演しており、キャラ立ても成功していた。何と言っても物凄かったのは、ハンス・ジマーの音楽である。「007 ノータイム・トゥ・ダイ」を見たばかりで、過去作からの有名フレーズを駆使した曲作りの巧さに惚れ惚れしたところであったが、今作では完全にオリジナルの曲を惜しげもなくたくさん書いてくれていて、その質と量に圧倒された。いずれも全く聴いたことのない音楽で、ガムラン音楽とブルガリア民謡を合体させたような独特の雰囲気が未知の惑星の雰囲気を感じさせるのに貢献していた。「ブレードランナー 2049」ではやや首を傾げたくなったこの監督だったが、本作ではひたすら見事な演出であった。後編が今から楽しみである。
(映像5+脚本5+役者5+音楽5+演出5)×4= 100 点。
>>羽ばたき式の乗り物では、機体の上下動が避けられないはずなのだが
でもトンボ、微動だにせずにホバリングしてません?
それよりも私が違和感を覚えたのが、力を入れて操縦桿を動かしているところ。
まさかケーブル接続で操作してんのかって。
あとアナログ高度計。まああれがガーッて回るのはロマンですけどね!