「こんな「魔女狩り」もあるのだな」魔女がいっぱい スモーキー石井さんの映画レビュー(感想・評価)
こんな「魔女狩り」もあるのだな
本作の舞台は60年代後半のアメリカ
物語冒頭、クリスマスの夜に両親を事故で失い、母方の祖母に引き取られる9歳の少年。
両親の死の喪失感から無気力状態の少年を救ったのは、厳しくもノリのいいおばあちゃんだった。
そんな元気を取り戻した少年にも新たな「試練」が待ち受ける。
それは劇中人間の中に紛れ込む魔女の存在。
少年は祖母との買い物中、魔女に目を付けられてしまう。
少年から事情を聴いたおばあちゃんは自身の経験と直感から一時いとこが料理長を務める
高級ホテルに一時避難。
しかし、そのホテルは大魔女の号令の下ウィッチ・コミュニティの集会が催され、少年は
偶然にもその場に居合わせてしまい、恐ろしい計画を知り、「痛手」を負う。
少年たちとおばあちゃんはその「恐ろしい計画」を阻止すことができるのか?
というストーリーだ。
ストーリーはいたって単純な童話的で勧善懲悪もの。
勇敢な少年とおばあちゃん、そして聡明な少女やとんまなお坊ちゃんを仲間に加え、
アン・アサウェイ演じるグランド・ウィッチと対峙する。
キャラクタ―は魅力的だが、ストーリーは個人的に少し物足りない感がある。
しかしながら、運命を受ける強さを持つ少年には敬服するばかりだ。
最後にこの現実社会に劇中のような「淑女」に化けた「魔女」は存在するか?
私は存在すると考える。
お菓子のような甘い誘惑はいくら年齢や経験を重ねても回避しがたいものがある。
乗ってしまったら最後、その先は財産や肉体といった大切なものを奪われ、
ともすれば豚箱行きだ。
だからこそ、劇中の主人公の少年は魂だけは奪われず、「誘惑」や「喪失」に負けない
強さの象徴だと感じた。