劇場公開日 2020年6月26日

  • 予告編を見る

「【”様々な怪物。そして、偶像に魅入られる群衆心理” 複雑なストーリー展開に翻弄されるが、クライム・スリラーとして見応えがある作品。】」悪の偶像 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【”様々な怪物。そして、偶像に魅入られる群衆心理” 複雑なストーリー展開に翻弄されるが、クライム・スリラーとして見応えがある作品。】

2021年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

興奮

難しい

ー 轢き逃げ事件をきっかけに、被害者の父と、加害者の父の立場が、中国からの不法入国者を絡ませつつ、二転三転する先の読めないストーリーに翻弄される・・。ー

■様々な怪物
・何といっても、知的障碍者の夫ブナムをひき逃げされた妻、不法入国者のリョナ(チョン・ウヒ)であろう・・。自分第一で、不法入国を隠蔽するためには、手段を選ばない。
同じ、不法入国した女性が先に結婚したという理由で、顔に火傷を負わせるし、不法入国を斡旋する男や、自分の出身地を罵倒した、ミュンフェの母親に対して行った事。そして、ミュンフェの妻とミュンフェ自身に対して”ガス栓を開いて”行った事。

・ブナムをひき逃げした息子を庇う、次期知事選で有力視される市議ミョンフェ(ハン・ソッキ)。
穏やかな顔をしながら、知事選を勝ち抜くために、手段も、殺人も厭わない。
今作では、様々な”悪の偶像”が描かれるが、ミュンフェは分かりやすい”悪の偶像”として描かれる。ラスト、リョナの行為により、火傷を負った彼の演説に聞き入る観衆の姿・・。途中から彼の言葉は、韓国語ではなくなるが、観衆は彼の演説の後、万雷の拍手を送る・・。
怖い、怖い・・、秀逸な群集心理を描いたシーンである。

・ブナムの父、ユ・ジョンシク(ソル・ギョング)。
知的障害の息子をひき殺されながらも、ミュンフェの市議選の活動に協力する・・。
ミュンフェの”悪の偶像”に魅入られた男であろう。
彼の、虚無的なモノローグ
”俺は悪い病に罹った・・。気が付かなかったのは症状がなかったから・・”
は印象的であるし、彼が、イ・スンシン将軍像の頭部を爆破した理由も分かる。

<ストーリー展開の先が読めないのは問題ないが、登場人物間の相関関係や、登場人物の多さが無駄に感じる事や、同じく無駄なシーンが多い部分が、少し残念だった作品。
 逆に、今作の一番の怪物、リョナがなぜあのような人物になったのかを、もう少しきちんと描いてくれると良かったかな、とも思った作品。
 だが、市議ミョンフェを演じたハン・ソッキの何があっても穏やかな表情を崩さないところや、愚かしき父、ユ・ジョンシクを演じたソル・ギョングの演技は、流石であった・・。>

NOBU