「そして、彼女の決断は?」モロッコ、彼女たちの朝 caduceusさんの映画レビュー(感想・評価)
そして、彼女の決断は?
イスラム社会では、未婚の母はタブーとされるが、それだけに、助ける側の人達もいるということなのだろう。
主人公サミアは、仕事を探し、カサブランカの町をさまようが、妊婦であるその姿を見て、ことごとく拒絶されてしまう。
小さなパン屋を営むアブラも、「仕事はない」と言って断るが、行くあてもなく路上で寝るサミアの姿を見かねて、自分の家へと招き入れる。
当初は、「すぐに出ていって」と冷たい態度とっていたアブラだったが、サミアが「何か手伝いたい」と言って作ったパンが売れたことで、アブラの仕事を手伝うことになる。
アブラの娘ワルダもサミアになつき、アブラとサミアの距離も少しずつ近づいていく。
お祭りの日に、サミアは産気づき、子どもを生むが、「私が育てると不幸になる。子どもは養子に出し、田舎に帰り、また誰かと結婚する。」と語り、自分の生んだ子どもを抱くことができない。
アブラの「よく考えなさい。」という言葉も受け入れることができず、数日が過ぎていく。
少し冷静さを取り戻したサミアは、子ども抱き、おっぱいを吸わせ、母親としての愛情に目覚めていく。
ある早朝、アブラとワルダの寝ている間に、サミアは子どもを抱き、家を出る…。
その先は、この映画の中では、描かれていないが、自分で子どもを育てる決心をしたということなのだろう。
アブラの「子どもを養子に出せば、物のように売られてしまう。」という言葉が耳に残る。
決して豊かではない国の中で、女性一人で生きていくことの厳しさと、イスラム社会の不条理を、この作品は描く。
モロッコの映画としては、日本初公開となる作品。映像も見応えあり。
ぜひ、劇場でご覧ください!