劇場公開日 2021年8月13日

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「今週(8/13~)の隠れた名作。超お勧め。」モロッコ、彼女たちの朝 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0今週(8/13~)の隠れた名作。超お勧め。

2021年8月13日
PCから投稿

今年99本目(合計163本目)。
今日はお休みをいただいて(会社のよくある計画有給)、4本はしごしたのですが、そのうちの最後です。

原作は adam(アダム)ですが、日本では全然違うタイトルになっています。ただしこの点はちゃんと理由が明かされます(ネタバレ防止のため以下カット)。

映画内でも明かされるように、モロッコにおける女性、それも妊婦に対する差別問題が背景にあります。かつ、男性が女性に対してそういうならまだ百歩譲って理解できるのですが、女の子まで「妊婦は悪魔だ」とか言ってくるので(公共窯に行くところのシーン)、かなりの嫌悪感が国内にはあるのかな…と思われます(ストーリー自体も実話から生まれたそうです。公式サイト参照)。

一方でこの手の映画、特に舞台がアラビア圏であれば、イスラム教の教えの影響によるものとも思えます。もちろんイスラム教の教えもどこまで厳格に守るかは国によって差があり(サウジアラビアのように厳格な国から、世俗化したトルコまでさまざま)、モロッコは「それほど強くはないが、決して無視はできない」ようです(参考:大阪市立図書館)。実際、街のお祭りに男女問わず参加していたり、「女性だけのパン屋」に男性が訪れて「普通に何の暴言も吐かずに」買い物をしている点を考えると、多少の宗教による「ゆがみ」はあっても、それは直接の原因ではないように思えます(むしろ、モロッコ特有の俗にいう土着宗教や教育事情など、関係がない部分からきている?)。

翻って世界を見渡すと、日本のように「男女平等は一応達成されつつあるが、まだまだで、まだもう少し努力が必要」な国がある一方で、「最低限の人権すらも存在しない国」があるなど(IS国を国とするかは微妙ですが…。ISISをテーマにした映画では「女性と踊ってはいけない」とかよくわからないことを言っていた。あの映画も実話)、いろいろな国の中で、今回のモロッコの描写のそれは、その中間点くらいにあるのだろうと思います。

また日本を見渡すと、韓国や中国、台湾(便宜上、国扱い)なども、日本と同程度の男女平等の考え方が浸透している国です。しかし、それは日本や日本の近くの国がそうなのであり、全体から見ればそうとは言えない国・地域のほうが多いという点、それは忘れてはならない…と思います。そして、その「差別感が残る国」だからこそ、出産に対して迷いが生じたり、出産後子供をどうしようか(例えば、孤児院に預けるなど)といった問題が出るのであり(日本では経済的な問題以外で、このような類型は現在ではおよそ存在しない)、世界各国という観点でみれば「男女平等はまだまだ」であり、「それと戦いながら、パン屋を一緒に経営して、最後に自分で決断を下す」という「少しでも抵抗していこう」という描写がとても好きです(ただし、一部、考えさせるのか意図的に決断部分をぼかしている場所あり)。

今年(2021年)下半期ではまず間違いなくベスト3には入りそうだし、全体(2021年全体)でもベスト3にも入りそうな感じです。決してアクションものでもないし、淡々と進んでパン屋を運営するという趣旨の映画で、「派手さ」は一切ないですが、考えさせられるところは多いです。

採点にあたっては、特に減点要素とすべき点はないので、フルスコアにしました。
(パンについては、モロッコのパンは日本ではほとんど売られておらず、固有名詞が余りにも多すぎて理解が難しい、という点は一応ありますが、何が何のパンかは本質論ではない)。

今週は「フリー・ガイ」があるのでどうしても2番手以降に回らざるを得ないのではないか…と思いますが、観て絶対に損はしないです。

yukispica