劇場公開日 2022年4月1日

「ジャレット・レトにこそ、治療法を授けて欲しいと願ってしまう一作。」モービウス yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ジャレット・レトにこそ、治療法を授けて欲しいと願ってしまう一作。

2022年5月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作ではスパイダーマンと敵対する、マーベルコミックのヒーローであると同時にヴィランでもあるモービウスの誕生を描いた本作で、主演のジャレット・レトは、病身の痩躯から吸血鬼化した後の筋骨隆々な身体を、過酷な身体改造によってモービウスを演じきりました。

不治の病を受け容れるか、それとも吸血鬼となっても生きるべきなのかなど、作中でモービウスは様々な葛藤に苦しみます。そのため彼が後々敵対することになるスパイダーマンとは対照的に、画面も物語も終始沈鬱さが付きまといます。時々ヴェノムを使ったジョークで笑わせるくらいでしょうか。そのため本作で爽快感を求めると肩すかしを感じる可能性がありますが、例えば『ザ・バットマン』などのジョーク控えめなダークヒーロー作品を楽しめる方であれば、本作の魅力を存分に味わうことができると思います。

モービウスとその友人がかかっている病気はどのような症状、深刻さなのか、どうやってモービウスは対処法を発見したのか、といった、作品の背景となる設定については、あまり説明的にならず、主に映像の積み重ねで示唆する程度にとどめています。そのためより詳細を知りたい場合は原作や資料に目を通す必要があるものの、本作はそのような詳細を知らなくとも、一つの作品として観通すことに何の支障もない作りとなっています。このあたりは演出力、編集による効果が大きかったと思います。恐らくスパイダーマンと敵対するヴィラン、という位置づけすら知らない観客でも、何も問題ないでしょう。

ジャレット・レトは役作りに入れ込む余り、過酷な増減量を行ってから撮影に臨むことが多く、かなり以前から通風を患っているそうで、今回も身体に負担がかかっていないか心配になります。彼にこそ治療法を…。

yui