「原作未読の観客には、未解明な要素を楽しむ余地が大きい一作。」さんかく窓の外側は夜 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
原作未読の観客には、未解明な要素を楽しむ余地が大きい一作。
説明過多に陥った映画が多い中で、ここまで基本的な設定を省略した思い切りの良さはすごい!んだけど、さすがに説明不足なのでは…、と、時々あたまがぐるぐる。ただ、そんなに脳内補完作業が苦にならなかったのは、やっぱり画面映えする役者達の功績かも。
本作で平手友梨奈を俳優として初めて拝見したけど、ホラー映画にありがちな絶叫場面をほとんど見せることなしに、画面を引っ張る力はさすが。岡田将生と志尊淳の能力って結局何?とか、彼らのやたら(無駄に)多いボディータッチにはどんな必然性が?とか、絵作りや話の面白さに感心するというよりも、後からいろいろ考えて楽しむ作品に仕上がっています(あと何で、この二人がひっついている構図が 、『一度死んでみた』(2020)の広瀬すずと吉沢亮にそっくりなんだろうか、とか)。
登場人物の多くが黒を基調とした衣裳を纏い、むき出しのコンクリートなど無機質さや冷たさを強調した建物の内装など、画面の統一感を出す上で効果的な演出、美術を眺める楽しさはかなりのもの。ただ、本筋とはまったく関係のない、普通の街角の風景にて、画面に登場する人物を全て黒系の衣裳に統一するというのは、ちょっとカラーコントロールをやり過ぎた感が。なんでみんな黒い服?大きなお葬式でもあったんだろうか…、とか雑念に囚われてちゃいました。ミスリードを促すような演出に何か意図があったのかと思ったら、実はそれほどでもなく。この辺りの演出の意図は、原作を踏まえたものなのか、後日読んで確認したいところです。
「(超常的な世界を)信じない力」がむしろ「敵」に抗する強さに繋がる設定とか、なかなか面白そうな要素がちりばめられていたので、そこいらへんをもう少し細かく見てみたかったです!