劇場公開日 2021年10月22日

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「ワタシスネークアイズハ、オリエンタルニツポンデ、ヤクザトタタカイ、ニンジャドウヲマナビマシタ」G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ワタシスネークアイズハ、オリエンタルニツポンデ、ヤクザトタタカイ、ニンジャドウヲマナビマシタ

2022年2月24日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

単純

興奮

アメリカのアクションフィギュアを基に、2作品が作られた『G.I.ジョー』のシリーズ最新作…と言うが、実質スピンオフ。
“G.I.ジョー”のメンバーで、漆黒のマスクとスーツ、類い稀な戦闘能力を誇る無口な戦士。人気キャラ、“スネークアイズ”を主人公に、そのオリジナル誕生秘話。

あ~、イ・ビョンホンが演じてて、『1』で死んだ筈なのに何故か『2』では生きてて、いつも必ず最後に鍛え抜かれた筋肉美を見せてた奴ね。
…って、そっちはライバルの“ストームシャドー”! スネークアイズは顔は一切見せなかったけど、レイ・パークが演じてた方!
もはや記憶も“白黒”はっきりしない。

前2作での設定はしっかり覚えてないけど、ライバルだが、かつては同士であった二人。日本で忍者修行をしていた。
と言う事で、いざ参上! ハリウッド製ニンジャ・アクション!
もう我々日本人からすれば、“ウケ”を狙っているにしか見えない企画。
ツッコミ所言う? 言うの? 止まんないよ。じゃあ、簡潔に。
まず、いつもながらの“日本じゃない日本描写”。
一応現代日本が舞台なのに、忍者一族が今も尚存在。
まあ、一万歩譲ってそれはいい、それは。でないと、作品そのものが成り立たないから。
一応これでもハリウッド史上最大規模の日本ロケを敢行したらしいが、それはあくまで“風景”のみ。一歩足を踏み入れると、薄暗い雨夜、ネオン輝く薄汚い路地裏…。
アレ? これ、どっかで見たぞ。そうだ、昨夏の『ワイルド・スピード ジェットブレイク』だ。同じセットを使ったの…?? ハリウッドはいつまでも“ブレードランナー症候群”を引き摺ったまま。
城とか時代劇風お屋敷とか、これはいつの時代…? 一応、現代日本が舞台なんだけど…。エリート忍者一族なのに、こんなに堂々と“我ら一族、忍者やってます!”ってアピールしてたら、日本国内でもバレバレだって。
お決まりのようなニンジャ、ヤクザ。代々引き継がれる誇り高き忍者一族なのに、何故かマスターたちが外国人。
悪役ヤクザに平岳大、“ゴッドマザー”な石田えり、女忍者に安部春香…日本人キャストも起用。渡辺謙、真田広之、浅野忠信、菊地凛子といったお決まりのキャスティングじゃないのは新味あるが、如何せん地味…。1億ドル近い製作費が投じられながら、日本人キャストに割くギャラ無かったのか…?
何処からどう見ても、典型的なハリウッド想像の“オリエンタル・ファンタジー・ジャパン”。
“日本”ではない。“ニッポン”でもなく、へんちくりんな“ニツポン”なのだ。

トンデモニツポンに、おあつらえ向きのベタな話。
幼少期に何者かに父親を殺され、復讐を誓うスネークアイズ。
そんな彼に近付いてきたジャパニーズ・ヤクザのケンタ。忍者一族“嵐影”の後継者一人だったが、破門。復讐を目論む。
その下で働いていた時、ケンタに命を狙われていた嵐影の後継者であるトミーを救う。
それがきっかけで友となる。トミーはスネークアイズを一族に招く…。

前2作では、スネークアイズは善のGIジョーで、トミー=ストームシャドーは悪の“コブラ”だった筈。
だけど見てたら、ストームシャドーが正当なる善の一族で、スネークアイズはちょいワルな雰囲気。
前2作に繋がるような経緯や訳あり遍歴は一応描かれる。
にしても…
やれ復讐だ、やれ裏切りだ、話の展開もキャラ描写も味気ナシ。
コブラやGIジョーのメンバーの一人も絡んできて、ファンにはニヤリのリンクだろうが、誰が誰やら、どの立場やら、時々こんがらがってきて…。
父親殺しの真相、復讐か嵐影の一族か揺れ動くスネークアイズ…。
各々の思惑や複雑な人間模様をアクションの中に交錯させたように見せて、ただの支離滅裂。
結局スネークアイズは、日本での忍者修行時代、何を学んだのか…?

ヘンリー・ゴールディングは陰を抱えた忍者ヒーローを熱演。
アクション監督に日本から『るろうに剣心』の谷垣健治を招き、ソード・バトル、車上&バイク・チェイス、迫力のアクションを活写。
大蛇まで登場! “スネークアイズ”に因んでの事だろうが、太古から生きている設定故、八岐大蛇の末裔と勝手に解釈。
『ザ・レイド』のシラットの達人イコ・ウワイスも参戦。
多様性時代に、アジアン・アクションを見せつける!

とは言え、よくあるハリウッドが大金掛けたB級。
リブート版『モータルコンバット』より全然こっち派だけど、どんぐりの背比べ。
端からそういう作品として見れば、娯楽アクションなのだけれど。

やたらと“忍者道”を押し出して、ハリウッドの日本リスペクトは嬉しいが、
例え時代や姿形変わろうとも、“義”や“仁”などの心、教えは変わらず、継承し続けるのが、忍者。
果ては、侍や日本人でもあり。
作風や形、こんなヘンテコ描写で見せてたら、全く相反するけど…。

日本でこんなのやったら、赤っ恥&大笑い。
代わりにハリウッドが恥ずかし気も無くやってくれる。
我々日本は、ハリウッドに感謝すべき…なのかも。

近大