「エセ日本を楽しめるかどうか!?」G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
エセ日本を楽しめるかどうか!?
予告のクールな映像で興味を持ち、前作未鑑賞のまま観てきました。登場する組織の関係性は、前作との繋がりがあるのかもしれませんが、ストーリー上は全く問題なく楽しめました。
ストーリーは、幼き日に父を殺されたスネークアイズが、敵討ちのためにタカムラと手を組み、忍者の嵐影一族に潜入して秘宝を盗み出すが、そこに謎の組織コブラも加わり、秘宝の争奪や嵐影一族の跡目争いをめぐる戦いに発展していくというもの。アクション映画らしい、シンプルでわかりやすいストーリーに好感が持てます。
肝心のアクションですが、序盤で見せたトラック運転席での串刺しシーンには萎えましたが、舞台を日本に移してからの殺陣やカーアクションはなかなか見応えがありました。特にバイクでの疾走シーンが近未来的でかっこよかったです。予告で見た忍者スーツ(?)が最後にやっと現れましたが、もっと早くからあの姿で戦ってくれるとさらによかったです。
作中の大半のシーンは日本でのロケと思われ、東京の街並み、城と城下町、日本庭園等が、目を楽しませてくれます。そこに日本人キャストとして、石田えりさん、平岳大さんらが登場します。石田えりさんは久々に見ましたが、頭領にふさわしい堂々とした佇まいが印象的でした。また、アキコ役の安部春香さんは、存じ上げない方でしたが、アクションもこなし、存在感を発揮していたと思います。
ただ、作品の設定としては気になるところがてんこ盛りで、ここをスルーできないと楽しめません。まずは、違和感しかない日本の描き方。都心からほど近いと思われるところに、忍者が大きな城と城下町を築き、そこを拠点としているところです。まったく忍ぶ気配はありません。さらに、ヒュンダイ車が乗り入れるわ、嵐影一族は多国籍軍だわ、セキュリティはがばがばだわ、日本人キャストでさえ厚化粧で違和感が漂う始末です。スタッフロールに日本人がわんさか並んでいたのに、なぜこうなったんでしょうか。ある意味アメリカフィルター越しの日本がよくわかるので、逆にこのエセ日本感を楽しみながら観るのが正解でしょう。
また、ストーリーがシンプルなのはいいのですが、スネークアイズの行動になかなか共感できないのはいただけません。仮にも主人公なのですから、裏切りや悪事に加担するにしても、それ相応の説得力を持たせ、観客に共感させてほしかったです。他にも、大炎上したはずの城や城下町が、一夜にして元どおりになったように見えたのも謎でした。この手の作品は、ストーリーなんて激しいアクションを見せるための言い訳程度のものかもしれません。しかし、アクションを楽しむためにこそ、気になるノイズの発生しないストーリーが求められるように思います。
ラストは冒頭に繋がるとともに、続編を匂わせるような終わり方で、これはこれで悪くないと思います。次回作はぜひアメリカを舞台にして、思う存分暴れちゃってください。