「新しい価値観」ワイルド・ローズ KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
新しい価値観
まさに今の時代にあった作品だなと感じた。
この作品の主人公であるローズはまさにダメ親でありどうしようもない勝手な性格で共感は全く生む事はない。
ただそれはなぜかと自身に問いかけてみると、「親なのに親らしくない」ってのが根本にあるわけだ。
では、その親らしいという理想像はなにか。子供を第一に子供のために人生を捧げる事なんだろうけど、それがもう固執した価値観であって今の時代、そしてこれからの時代はそうでなくてもいいんじゃないかというメッセージ性のある作品に思えた。
もちろん序盤に描かれたローズの子供に対する姿は決して良いものではないと思う。子供の存在を隠して生活し、そして子供の面倒を自身の母親に任せることが当たり前になりフラフラした生活を送ってるわけだ。
ではそれはなぜか。彼女自身も親としてあるべき存在というものが心にそして頭にはありながら、でも自身が描く理想の姿、やりたい事を本気でやれない事からなにをやるにも中途半端で投げ出す生活を送ってしまってるわけだ。
この作品では分かりやすくシングルマザーでありながらアーティストになりたいという夢を捨てきれず、育児との現実で悩みもがく姿を作品として描かれてるが、これは世の子を持つ親たちの各々の悩みと照らし合わせたり置き換えて見ることができるのではないか。
親だからやりたい事、そして夢や理想を捨てより現実的な事に進むことはもちろん悪い事ではないが、追いかけるのもまた悪い事ではないのであろう。
もちろん序盤のローズのように心の迷いや中途半端な覚悟では周囲を不幸にするだけの結果になってしまう。
強い覚悟と気持ちがあって初めて周囲を納得し、理解されてその背中を押してくれるのであろう。
もちろんその内容によっては周囲の協力がなくしてはならい場合もある。だからこそ周囲がついてきてくれるような強い覚悟と気持ちが必要なのであろう。
日本においては近年、結婚の平均年齢が遅くなり、そして子供を生まない家庭が多くなった。
この背景にはこの作品で描かれているように子供を育てる事で自分のやりたい事に限りが出るといった理由が原因に当たるのも多くの理由の一つではないか。
もちろん育児をしながら独身時代のように何もかも不自由なく好きなような事がやれるとは思わないが、育児を理由に夢や理想を捨てるのは違うのではないかとこの作品で凄く感じさせてもらった。
育児の真っ只中の親となる方々が見れば共感、そして励まされる場合もあるのではないか。そしてそうでない人人にとっても、新しい価値観に触れることのできる作品となるのではないかと感じた。