「一流のワル×アブナイジェントルメン、ガイ・リッチーの匠技!」ジェントルメン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
一流のワル×アブナイジェントルメン、ガイ・リッチーの匠技!
『シャーロック・ホームズ』『コードネーム U.N.C.L.E.』『キング・アーサー』『アラジン』など大作を手掛ける事が多くなったガイ・リッチー。
そんな彼の、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』など原点回帰とでも言うべき犯罪活劇。
スタイリッシュ!テンポの良さ!クールな音楽!
これぞ見たかったガイ・リッチー・ムービー!
開幕早々、主人公が殺されてびっくり!
いきなり結末見せちゃうの…??
でもこれも“仕掛け”の一つ。
勿論話は遡る…。
英ロンドンの裏社会。
大麻ビジネスで成り上がった大物ギャング、ミッキーが引退を決意。さらには、総額500億円の大麻ビジネスも売却するという。
裏社会がそれを無視する訳ない。
大麻ビジネス利権を巡り、ミッキー、ユダヤ人大富豪、中国系マフィア、私立探偵らが時には売却話を持ち掛け、時には虎視眈々近付き…。
とにかく話が面白い!
この手の犯罪活劇好きなら、絶対見て損ナシ!
軽妙な語り口で、ユーモアの入れ方も絶妙、サスペンスやバイオレンスもピリッと効いている。
思惑、騙し合い、どんでん返し。
それを展開し、繰り広げる“ジェントルメン”たち!
百獣のギャング王、マシュー・マコノヒー。『ダラス・バイヤーズクラブ』『インターステラー』以降ちと精彩欠いていたが、久々に魅力と存在感を発揮。
彼の右腕、チャーリー・ハナム。もう一人の主役とでも言うべきいい役回り。
後釜を狙うユダヤ人大富豪=ジェレミー・ストロング、中国系マフィア=ヘンリー・ゴールディング。憎々しく、小賢しい。
謎の男、コリン・ファレル。美味しい役所!
狂言回し的な私立探偵、ヒュー・グラント。彼の演技も含めクセ者!
信用ならぬ一癖二癖ある連中ばかり。
そのキャラ設定もいいが、この豪華な面子が堪らん!
単なる三つ巴の争いに非ず。
中国系マフィアの老若対立。
ミッキーに恨みを持つゴシップ紙の編集長はあるネタを掴む。
そのネタである、ミッキーの友人の大富豪の、ヘロイン漬けになっている娘の救出。
右腕レイが一応事態を収束したが、この時チンピラ相手に手こずって、思わぬトラブルが…。
それがきっかけでドミノ式に、ロシアン・マフィアまで参戦。
アマチュア格闘技集団がミッキーの大麻畑を襲撃。彼らの更正に務めるコーチ(=コリン・ファレル)が、そのお詫びにレイの仕事を引き受ける。
そして何よりユニークなのは、二重構造の“仕掛け”。
実は作品が、グラント演じる探偵がレイにミッキーをモデルにした麻薬王を題材にした映画の脚本を持ち掛けるシーンと、ミッキーと三者三様の争いが交錯して展開。
つまり、映画本編と映画の中の“映画”が入り乱れながら同時に進行していく。
ちなみに、開幕の殺されるミッキーは、“映画の中の映画”。
何か、ややこしい感じがするが、見てみると全然そうではない。
三つ巴の争いもメリハリくっきりと。
その他のエピソードも旨味スパイス! 小ネタ伏線にもなっていたりする。
“映画の中の映画”が巧く、突然のスリリングな展開やドラマチックな展開が“造り”になっていたり、それが笑いにもなったりする。
いや~見事!
何だか見てて、ガイ・リッチーは本当にこういう作品を撮りたかったんだなぁ…と、心底感じた。
“格言”的な台詞も印象的。
ミッキーが若き中国系マフィアに語った中国の“ドラゴンとライオン”の話。
ミッキーが麻薬王である証し。“ジャングルの王になるにはそう振る舞うのではなく、そうならなくてはならない”。
自分をハメた者、貶めた者には金でやり返すが、
愛する妻を危険に晒したクソ野郎には命で対価を払って貰う。
やはり非道で恐ろしい世界。
でも、どうしてもしびれてしまう世界。
面白かった!
いい感じで続編も期待出来そう。
でも、“脚本家”の探偵の安否は如何に…??(笑)