グンダーマン 優しき裏切り者の歌のレビュー・感想・評価
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面白いとは思ったが。
主人公のグンダーマンという歌手については全く知らなかった。が、家内も僕も”善き人のためのソナタ”に感銘を受けたので期待して観てみた。家内はドイツ語は僕よりもわかるのだがドイツの歴史についての予備知識がなかったので話について行けなかったようなので後で説明した。東ドイツのディランと言われたそうだが肯けるところはある。事実なので描かざるを得なかったのだろうがこの略奪婚は相当酷い。また、1975年と1992年を行ったり来たりするのだがグンダーマンの見た目の違いが髪型と眼鏡だけ(顔自体はあまり変わっていない)ので少しわかりにくい。鑑賞後にYouTubeてグンダーマン本人を見てみたがよく似ていて驚いた。
意外な収穫、リアルな生活感が再現された美術が良かった。
共産主義という枠組みの中での承認欲求からのシュタージ活動、人が作った家庭を丸ごと横取りしたような愛の巣、同じバンドなのに心が通ってないメンバー。この人は終生他人の靴を履いていたのかな。共感を持てても、どこか徒労を感じさせる人間関係。そんな蓄積が寿命を縮めてしまったのかと邪推してした。でも詞とメロディが残ってよかった。監督が「道化師」を描いたと語っていたのに合点した。
興味深かったのは、70年代の東ドイツの一般家庭の設え。決して広くない居室は本・レコード・書類であふれていたけど、バウハウスの流れを感じさせるような(主観です)シンプルで飽きの来なそうな調度品のミッドセンチュリーっぽさはかっこよかった。灰皿見たいな果物入れ、ポーリッシュポタリー風のコーヒーカップと砂糖つぼもかわいかった。洗濯機は殺菌機能のある高温洗い、にもびっくり。
【自由と平等の社会を夢見た”東ドイツのボブ・ディラン”の生き様を淡々淡々淡々・・、と描いた作品・・。】
◆ゲアハルト・グンダーマンの存在は、今作で初めて知った。
<ある雑誌に記載されている彼の生涯>
・1955年、ドイツ・ワイマール生まれで、チェコとの国境近くの炭鉱地区で成長
・偶像崇拝に反抗し、軍隊学校を追い出され、炭鉱で働きながら音楽活動を開始
・1998年、43歳で“過労“が災いし、急逝
今作は、彼が炭鉱で働きながら、音楽の路も進む姿を、淡々と描く。
1992年を起点に、70-80年代の出来事と行き来しながら・・。
◆感想 ・・ちょっと、ネガティブ・・。
・グンダーマンの1990年代と、1970-80年代との容姿が、あまり変わっていないため、時間軸が分かりにくい。
・グンダーマンが、”自由と平等の社会を夢見て”シュタージ(秘密警察)の一員になった理由の描き込み方が粗く、彼がシュタージとして行った事も描かれていないため、単調に感じてしまう。
・後に、妻となるコニーとの関係も・・
ー 親友の妻を奪った、略奪婚じゃないか!ー
・地平線まで伸びる広大な、野天掘りの石炭採掘場の風景や、巨大な採掘機には、ビックリ。
・彼が、現在のバンドメンバー達に”昔、シュタージだった・・”と告白するシーンも、拍子抜けする位、淡々淡々と・・、描かれる。
<”自由と平等の社会”を創ろうとした理想を持った人たちが、加害者になり、被害者になる・・。
その辺りを、もう少し掘り下げて描いて欲しかった作品。
グンダーマンの曲と、コンサートシーンが良かっただけに・・。>
<2021年7月11日 刈谷日劇にて鑑賞>
社会主義に理想を求めた悲劇
石炭採掘場で仕事をしているゲアハルト・グンダーマンは、仕事が終わると自ら作った曲をバンド仲間とステージで歌っていた。彼の歌は、多くの人びとに感動を与え、人気者になっていった。その一方で、彼は東ドイツの秘密警察(シュタージ)のスパイとして友人や仲間の情報を提供し、結果的には仲間を裏切っていた。1990年の東西ドイツ統一後、自分も友人に裏切られていたことを知ったグンダーマンは、軽蔑、葛藤、悩み、苦しみ、とともに生きていくことになったという話。
確かに実在し、こんな人が居たのだろうけど、歌が好みじゃなかったからか、素直じゃない所も有り、あまり共感出来なかった。
社会主義に理想を求めていたから党に協力していたのが、結局は友を裏切ることになった悲劇なんだけど、もっと悲惨な人達は多かったと思う。グンダーマンを悲劇のヒーロー扱いして共感するほどの話じゃなかった。
優しくない裏切り者…
東ドイツのシュタージに協力し、仲間を売っていた過去を持つ、人気ミュージシャンの苦悩を描いた作品。
この作品、(多分)今と昔が行き来する系なんだけど、その展開が難解過ぎてよく分からん…
決定的なのは、昔の彼女と今の嫁さんがソックリで自分には見分けが付かないこと…苦笑
しかも副題に『優しき裏切り者…』ってあるけど、一体どの辺が優しき男なのか…
家庭のある音楽仲間と不倫の末、その旦那を自分が住んでいた部屋に追い出して、自分は不倫相手の部屋に転がり込む…
どの面見せて『優しき男』なんて表現が頭に浮かぶんだ?苦笑
かなりメッセージ性の強い作品なのだと思うけど、主人公の破天荒ぶりと難解な構成で、感情移入度も上がらず…モヤモヤさせられてしまった…
治安維持法の下では
日本だって同じだった。隣組は相互監視だったし、みんながそういう世の中を作ることに多少関わっていたし、関わらないでいられる人はいなかった。
現在は多少の言論の自由があるので、すっかりそんなことは忘れている。
東ドイツで起こっていたことは、今の日本とかけ離れていると私には思えない。
全体主義社会で生きていれば
ドイツ映画賞で六部門を受賞した宣伝文句に惹かれ、鑑賞しました。
第二次世界大戦で日本は敗戦することにより、アメリカに占領された結果、民主主義国家となりました。76年前の出来事です。戦争前の日本を知る人は、どんどん少なくなっています。
ソ連邦崩壊により、旧東ドイツは西ドイツに併合され、東ドイツ市民は自由を獲得しました。
30年前のことです。まだ、旧東ドイツ市民にとっては、生々しい記憶なのでしょう。
映画は全体主義国家であった東ドイツで人気があった実在のシンガーソングライターの伝記です。
監視国家に生きていれば、密告するのは当たり前です。私は彼に同情します。
自身の密告により被害者が出ても後悔はするが、共産党員であることを止めません。ちょっと理解不能です。幼い頃から植え付けられた共産主義から自由になることができないのでしょう。怖い話です。
歴史知識を入れて鑑賞することをお勧めします
あぁ、後悔。
僕がドイツについて不勉強、歴史知識が少ないため、
なんとなーく。。。な感じになってしまいました。
東ドイツの歴史、西ドイツの歴史、
シュタージ(東ドイツの秘密警察)とは?その活動内容は?
ドイツ再統一後の庶民への影響、などなど、
この歴史的背景がこの物語の中で生きる
人間達の人生を大きく左右しますから、
背景を十分に理解していたら
もっと興味深く鑑賞できたかも?と残念に思ってます。
きっとそれらのことを知っているという前提で作られている
作品ではないだろうか?と思います。
ですから、これからご覧になる方は、当時のドイツ情勢を
頭に入れておいての鑑賞をお勧めします。
特にシュタージは知っておいたほうが良いです。
(被害調書、加害調書というものがどういうものか?
知っておいたほうが良いです)
さて、作品ですがドイツ再統一前後を描きます。
時代感を映し出すその映像は、当時のドイツ(東)を
十分に映し出しているのではないでしょうか?
炭鉱の迫力ある描写は凄かったですね
グンダーマンの再現度(歌含め)に負けず劣らず
時代の再現度は高いです。
みんな国や自分の生活、仲間達のことを思って
生きているのですが、せつないかな、ボタンの掛け違え
って発生しちゃうのですね。
悪気はない前向きな活動。
・・・けど思想が違う、システムが違う、体制が違う。
違うから、求めることがズレていく。
それと、この悲しい限りの告げ口システム。。。。
管理社会=不信社会・・・あぁ嫌だ嫌だ。
つくづく・・・戦争がなければ良かったのにね・・・
本作はグンダーマンを通して当時の国が政情が
もたらした悲哀と「ある虚しさ」を描いていると
思います。繰り返してほしくないという願いも
含まれているのではないでしょうか?
テーマや描いていることはとても興味深いものです。
しかし、統一前後の描写が切り替わるのですが、
僕は違いがぱっと見で判断できなかったので、
いつの話だ???と混乱してしまったことや、
やはりグンダーマンの心情、行動の動機が
描ききれていないような気がするのです。
優しい愛あふれる人であることはわかるのです。
また、とても仲間想いで自身の主張のためには
体制にも物おじしない。そして国を考えている。
じゃぁ、どーして?そんなことしたの?
両極端のことやってるけど、その心情は?
わかっててやってるのに、よく平気な顔で
歌歌ってるね。。。
この辺りが僕はスッキリしませんでした。
そこが知りたかったのになぁ。
ただ、国のために、党のために・・・では片付けられない
もっと複雑なことがあったように思うのですが。
その点の描写に不満があり、全体的な厚みを感じれ
なかったのです。
ちゃんと前情報入れて鑑賞したら感想も
変わるのかもしれませんが、現時点では
この評価です。
見て損はない映画かもしれません。
結局、映画一本を使って描くほどのネタでもなかったというのが結論ではないしょうか。
なにやら時系列がわかりづらく、ストーリーに入りきれないために、徐々に傍観者になりがちな映画ですが、ライブシーンがあるために、少しだけ映画の中に戻ることができます。
面白くないというところまでもいかず、大きな盛り上がりもなく、エンディングをむかえます。
秘密警察に協力して、人を裏切った葛藤を描ききれているかどうかというところも、よくわかりません。
東ドイツはどうなんでしょう。まったく詳しくないのでわかりませんが、人道的にあまりにひどい話は出てきませんね。だから、ベルリンの壁が崩壊したと言えるのかもしれません。
共産主義の中で生きる人々の様子を伺い知れる作品ではあるので、見て損はない映画というところでしょうか。
秘密警察に協力していたから、音楽活動が出来ていたとすると、ミュージシャンとしての評価は難しいですね。
それでもアーカイブが機能してた国
トニ・エルドマン、希望の灯り、ある画家の数奇な運命、ウンディーネ、ハイゼ家と、旧東ドイツ出身の俳優が出る旧東ドイツ関連のいい映画が続いている。
この映画の主役のアレクサンダー・シェアーも東ベルリン出身でグンダーマンを演じている。シンガーソングライターとしても非公式シュタージ協力者としてもグンダーマンのことは私は全く知らなかった。でもこの映画を見て、東ドイツの人の優しさと静けさ、毎日を大事にする真面目さと温かさを感じた。映画の冒頭、車が走るシーンですぐに東ドイツだと思った。標識の文字のフォントのせいもあるけれど、何より道路の舗装が継ぎ接ぎだらけだったから。
グンダーマンは石炭採掘場の安全を求めて視察に来たお偉いさんを批判する。例えば同僚みんなが感じたこととして、皆トラビなのになんであんたは西(ドイツ)の車に乗っているんだ?と。具体的な仕事をして労働者であることを続けていても、太陽があるのになんでわざわざ石炭を掘るんだろうねと言うグンダーマンの言葉は本質だなと思った。
シュタージの活動に取り込まれた人は非公式ふくめて膨大な数なんだと思う。映画でのような形で言いくるめられるというか提案されたらなかなか断れないと思った。より良い国のために、と思ったろう。そしてその自分も監視対象となるのだとは夢にも思わなかっただろう。クリスタ・ヴォルフ、ハイナー・ミュラー、そして逆versionだけどビアマンの名前も挙がってた。うーん、生々しい。
自分が監視されていた「被害者」としての文書をグンダーマンは見ることができなかったのはなぜなんだろう。逆に「加害者」としての分厚い資料は読めたのに。そういった不完全だったり公平でない部分があるにせよ、自分や家族が関連するシュタージ資料は黒塗りなしで「読める」のはすごいと思った。一方で、公文書を短期間で平気でガンガン破棄する国、大事な情報を真っ黒にして隠す資料しか提出しない国、つまり今私が住んでいる国も相当にすごい。
グンダーマンが歌う歌詞はとても良かった。コニーとの関係も、バンド仲間との関係も良かった。そして自らの口から客席にいる観客に自分がシュタージ協力者だったことを告げたのには胸が痛んだけれど、誰一人会場から立ち去らなかったし、彼に生卵を投げつける者も居なかった。批判精神と国を愛することは共存しなければならないことだ。何でも国のせいにするのでなく、自分を許せないというグンダーマンの気持ちに私は心動かされた。すぐまずは「謝る」ことを求める世間よりも、とりあえず頭を下げて「謝る」人達よりも、ずっと信頼できる。こういう人となら寄り添って話してみたいと思った。
見てよかった。
【憲法改正】
果たしてこれは東ドイツなど昔の共産圏だけの話なのだろうか。
メルケル首相が、東ドイツでの自身の経験を踏まえて、コロナによる国民への行動規制を、本来はあり得ないことと強いメッセージを発信したり、フェイスブックやTwitterなどSNSによるトランプのアカウント凍結を表現の自由の観点から問題があるのだと発言したことを思い出した。
確かに、旧東ドイツやソ連などと似て、中国はテクノロジーの発達や利便性まで利用して、より強い監視型社会になっているように思う。
だが、僕達の一応自由主義社会でも、SNSが利用者によるインターネットへのアクセスを通じて嗜好を分析し、ターゲット広告を当てて来てくることは、経済学者ショシャナ・ズボフが警鐘を鳴らす「監視資本主義」を想起させるし、デジタルは便利だけれども、或る意味、覗かれる必要のないものまで見られているようで暗澹たる気持ちにもなる。
そして、もう一つ、視点を変えたら、多くの人が働く企業でも、似たようなことは日々行われているのではないのか。
もともと、グンダーマンは、労働者の就労環境をより良くしようと提言していたのだ。
しかし、その要求が強くなると、当局から疎まれる存在となる。
ただ、こうした善意を飴と鞭を使い分けるようにして取り込んで、拒否を出来ないようにして、当局はグンダーマンを利用したのだ。
〇〇は、西側に亡命しようとしているが、彼の能力は東ドイツには必要だとか…。
僕達の企業のケースとして、Aさんは転職しようとしているが、彼の能力はわが社にとっては必要だというエピソードに置き換えたらどうだろうか。
後者では、給与の引き揚げとかプロモーションとかあるかもしれないが、前者では強い監視や身内を利用した脅迫などがあって、結果は異なるだろう。そして、それは、致命的だ。
こんなケースじゃなくても、資本主義社会では、上司の意向を忖度して、他の人の足を引っ張ったり、或いは、自分自身の競争のために他人の成果の一部を自分のものに見せかけたりするやつはいっぱいいる気がする。
グンダーマンを演じたシェアーの歌は素晴らしい。
グンダーマンの歌声も素晴らしかったのだと思う。
ボブ・ディランと共演したことがあるとしたら、尚更、興味が湧いてくる。
素朴で率直な歌は、どこかノスタルジーを誘う。
きっと、人の本来の心は昔から変わらず、こうした歌は多くの人の心にに響くのだと信じたくなる。
しかし、社会思想が変化して、テクノロジーが発達しても、人の良心や善意に付け込む組織や人間は必ずいて、監視したり搾取したりしているのだとしたら、それも昔から変わっていないのだ。
日本では、コロナ禍を受け、国民の行動抑制をより強固に行えるようにと、憲法改正に賛同する人が増えたらしい。
日本は、治安維持法への反省から、私権を制限することは極力避けてきたという歴史がある。
これは美徳だ。
マスクを外して映画を観て、くしゃみをしているおばさんに遭遇して、スタッフに注意してもらったことはあるが、実は後味が悪かった。
こんなごく少数のモラリティの欠如した輩のために、国民全体の私権を制限する可能性があるような憲法改正に賛同するべきだろうか。
是非、メルケル首相の言葉を思い出して欲しい。
そして、考えて欲しい。
日本にも世界にもグンダーマンのような悲劇は、二度といらないのだ。
果実皿
かつてシュタージの協力者であったことをステージ上で告白した実在したシンガー、ゲアハルト・グンダーマンの話。
まあ、グンダーマンを知らなかったけどね。
ドイツ再統一後の1992年からの話と、冷戦下の1975年からの話を時系列をミックスしてみせていく…メガネのフレームと髪型の違いはあるけれど、ちょっと判りにくい。
再統一によりシュタージ資料が公開される中、自身が協力者であった旨を友人に打ち明けると、実は友人も…再統一されたとはいえ、閉塞感や思想にまだ東ドイツ時代の名残を少々感じる。
露天掘り炭鉱で働きながら、ミュージシャンとして活動するグンダーマンの恋愛と家族事情や、社会主義統一党員になりつつも思想の異なるメッセージ性のある曲を歌う姿等をみせていくけれど、冷戦末期、互いに足を引っ張り合うかの様な監視社会に、やはり疑問を感じていた人達は多かったんだろうね…。
そして、明るみになった協力者達へのバッシング。
現在のSNSで叩き合う社会も大して変わらないよなぁ…という気持ち悪さを感じたのは自分だけかな?
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