「三島由紀夫・・・生まれてくるのが早かったのか?遅かったのか?」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
三島由紀夫・・・生まれてくるのが早かったのか?遅かったのか?
今から52年前にこんな巨人(近代ゴリラ?)が生きていた。
天才小説家and天皇崇拝and右翼思想家
この映画はそんな三島由紀夫の素顔がありありと見える貴重な映画です。
2020年(日本)監督・豊島圭介・108分
1969年5月13日に東京大学駒場キャンパスの900番教室で行われた
作家・三島由紀夫と東大全共闘1000人との2時間半の伝説の討論会のドキュメンタリー。
三島由紀夫の1年半後の市ヶ谷クーデターにも触れ、
当時の全共闘の闘志の現在や、現代の識者(平野啓一郎他)の解説、フィルムを撮影して保管したTBCなどの証言も聞ける貴重な映画です。
だいたいに学生運動とはなんぞや。
ともかく若者たちが元気活発だった。
何千人ものデモ。
警察に火炎瓶や角材を持って立ち向かう。
その勇敢だったこと。
(就職に不利・・・とか、せっかく東大まで受かった息子の、この姿・・・親が泣く・・・)
そんな忖度は若者に無かった。
世を正すこと!!
官憲に立ち向かうこと!!
秩序を乱すこと!!
今の大人しい若者が見たら聞いたら、あまりの違いに腰を抜かすに違いない。
当時既に三島由紀夫はノーベル賞も狙える大作家で、プライベートで民兵組織「楯の会」を
主催する武闘派でもあった。
そんな三島由紀夫が単身、東大駒場キャンパスで1000人の東大生と堂々と渡り合う
大討論会だ。
会のポスターには三島の似顔絵の下に「近代ゴリラ」の文字。
そして飼育料100円と会費のことを書いている。
三島は終始冷静にしてにこやか。
相手の話を決してさえぎらずに最後まで聞く態度は素晴らしい。
東大の論客は芥という名の闘志が、女の赤ん坊を背負って登壇していた。
小難しい話をする男で、私には殆ど意味不明だった。
彼の抽象論に業を煮やした学生の一人が、
「今日は三島由紀夫をぶん殴る会だと聞きて来たんだ」と登壇するが、
これもことなきを終え、三島由紀夫が論破され顔色を失うシーンは、
残念ながらなかった。
「君らが一言、天皇と言えば、喜んで手を繋ぐのに・・」
と、ラブコールをしたり、ポロリと、
「革命で人を殺して、お巡りさんに追いかけられたら、その時は自害する」
などの意味深発言もあった。
1969年前後は「世界革命の年」だった。
ベトナム戦争
フランスの5月革命
プラハの春の終焉
歴史との距離感が今とは違うのだ。
他人事ではなくて、自分ごと。
世界の歴史を肌で感じるそんな時代だった
ガチで討論する三島由紀夫と東大全共闘。
そんな熱かった時代が懐かしい。
「学生運動」で日本は変わったか?
少なくとも学生運動活動家の意思は様々な業種に浸透して変容して根付いている。
そんな圧倒的な熱量だった。
過去鑑賞