「言霊の解放区」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
言霊の解放区
通常スクリーンで鑑賞。
討論会記録本は未読。
1969年、東京大学駒場キャンパス900番教室。安田講堂が陥落した直後に開かれたこの討論会の内容を、全て理解出来た自信は無いけれど、自分の中に確固たる思想を持って、それに従って行動することの重要さと意義を思い知らされた。
片や右翼、片や左翼。主義主張が正反対の両者が、知力の限りを尽くして、真っ正面から議論する。その熱量は、現代人に欠けているものは何かと問い掛けて来るようであった。
センセーショナルな時節にも関わらず、暴発的な感情が入ることを許さない、徹底した理論の応酬。暴力が介在していないにも関わらず、まさに死闘そのもののテンションで、言葉の刃を交える両者の攻防が、スリリングで堪らなかった。
三島由紀夫について。没後50年、今も唯一無二の輝きを放つ。読書好きには文豪の一面が身近だ。「潮騒」と「命売ります」しか読んでいないが、艶かしい描写に惹きつけられる。
俳優として映画に出演したり、江戸川乱歩の「黒蜥蜴」を戯曲化したりと多彩な才能を発揮しているのも魅力的だ。
かと思えば、「盾の会」を結成して軍事訓練にいそしみ、陸上自衛隊方面総監を人質にして立て籠もり、自衛隊員たちに決起を促した後切腹して果てたことを知っているくらいだ。
討論の始めから終わりまで一貫して真摯な姿勢で学生たちと対等に接していたのが印象的だ。ユーモアを忘れず、彼らの主張を決して否定せずに、まるで説得するかのように語る。
三島を言い負かしてやろうと息巻く学生たちの勢いに微笑しながら、声を荒げず真っ向から議論しようとする姿は知性に満ち、己を明確に確立した人間に見え、カッコ良かった。
[余談]
新型コロナウイルス感染拡大を受けて発令されていた緊急事態宣言が解除されたことで、映画館もどんどん営業を再開している。これを機に2ヶ月ぶりに映画館へ。危機が完全に去ったわけではないが、体がうずいて仕方が無かったのである。
映画ファンにとって映画館と云う場所はとても大切だし、大きなスクリーンで映画を楽しめることの喜びは、やはり何ものにも替えがたいものであることを、改めて実感した。
私が観た回は貸切状態だった。今はほぼ全ての劇場がそうではなかろうか。得した気分だし、寂しいような気もする。
日常の尊さを噛み締めつつ状況の好転を祈るばかりだが、矛盾した行動を取ってしまっていることは自覚している。
言い訳めいたことを書いてしまったが、自分なりの感染対策を万全にし、なるべく誰もいない回を狙って観たいと思う。
[以降の鑑賞記録]
2025/05/26:Amazon Prime Video
※修正(2025/05/26)
たあちゃんさんへ。
コメントありがとうございます。
そう言っていただけると心が軽くなります…。確かに大きなスクリーンを独占なんて、普段ならば絶対と言っていいほど不可能なことですから、この“非日常感”を楽しむ、というのも一興なのかもしれませんね!
ちっとも後ろめたさを感じる必要は無いですよ。今映画館が最も安全で贅沢な娯楽です。
前後左右が必ず空いていて、でかいスクリーンを独り占め状態で楽しめるのですからたまりません!
NOBUさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
葛藤はありましたが、欲望に負けてしまいました…。私の行った映画館には、私含めて客が4人しかいませんでした…。閑散にもほどがある状態で、日常が戻って来るのはまだまだ遠い、というよりも、もう戻って来ないんじゃないかなと思わされました。一刻も早く、後ろめたい気持ちを抱くこと無く、正々堂々と映画館などへ足を運べるようになりたいですね…。
今晩は。
前半の今作のレビューは私とほぼ同じ感想を書かれていたので、後半部分のコメントに対して。
<結論>
強く共感出来るコメントでした。私の居住区では2W前に緩和宣言が出ましたが、今だ映画館に足を運ぶのを躊躇しています。観たい映画を上映してくれている車で行ける映画館は職場近くのミニシアター(大英断で解除直後から開館)含めて2館ありますが、(昨日は会社に仕方なく行ったのですが、時間が合わなくて鑑賞断念・・)未だ迷っています。
映画館で映画を観る事が大好きな誰もが葛藤しながらの時期ですよね。
けれど、それを吹っ切って観た時の感動は半端ないだろうなあ。私は今週末から行ければなあ(仕事との関係もありますが)と思っています。
では、又。
『愛の渇き』も『命売ります』もいいですね!『豊饒の海』…好きですが、何でああいう風な終わり方にしたのか…。三島の作品は戯曲も歌舞伎も含め、素晴らしく大好きです。でも、あの最期だけは、最低(極端な言葉でごめんなさい)だと思います。