「「知らないからいいや」とスルーするには勿体ない!!」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
「知らないからいいや」とスルーするには勿体ない!!
三島由紀夫?東大全共闘?「知らないからいいや」とスルーされそうなドキュメンタリー映画ではあるが、その考えでスルーしてしまっては絶対に勿体ない作品である。
仮に知識が全くなくても「言葉」のもつ圧倒的な力、熱量というものを感じずにはいられない作品となっている。
左翼思想と右翼思想が対立してるだけという次元のレベルではなくて、人間の持つ思想の根源や存在する意味、自と他の関係性を1960年代後半をリアルタイムに生きている若い世代と、戦争というものが当時の日本国民の脳裏に植え付けた国の運命と自分の運命が共同体であるという思想が敗戦によって「無」とされてしまった日本人との決して交わらないジェネレーションギャップによる物の考え方は理解し合えるかというと難しいし、人によっては自分の思想・主張こそが「正しいもの」と部分のフィルターを通してでしか考えられないために、制圧や暴力という良からぬ方向に傾いていまい、その様な意見のぶつけ合いは、平行線でしかない。
今回の討論会が互いが自分の意見ばかりを主張して、相手の発言を全く受け付けないようなものだったとすれば、暴力事件に発展していたのかもしれない。
しかし、三島も東大全共闘の面々も互いの意見を受け入れて、その中で分解していくスタイルは物事の考えた方が違う者も理解し合えるという希望をもったものではあるが、討論会から50年経った今、残念ながら希望は希望のままに現実には近づいていない。
この討論会は全部理解するのは、正直難しい部分もある。数々の芸術的文学作品を生み出してきた男と東京大学の天才達の発する言葉の数々や引用元は実際にこのドキュメンタリーに登場する人物たちもすべてを理解できている人は少なく、ある程度の憶測をするしかない部分も含まれている。
確実に言えることは、令和の今を生きている人たちにとっても、突き刺さるほどの刺激を与えてくれる討論会であると言えるだろう。
ドキュメンタリーの枠では全然収まっていない、ある種のエンターテイメントとも言える作品であろう。個人的に、こんなに刺激を受けた討論会というのは初めて観た。
当時、この討論会の様子を映像として残していたのは、TBSのみで長い間行方不明状態とされていたために、この討論会を映像で観るというのは、不可能に近かったのだが、TBSが2019年にフィルムを発掘!!
ウェブ上やニュース番組等で3,4分のものを小出しにしてきてはいたが、ここまでの長い映像を観られるということ自体も非常に貴重な体験ができる映画と言ってもいいだろう