劇場公開日 2020年3月20日

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「難しいし面白くないけれど、観たらいいと思う」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 CBさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5難しいし面白くないけれど、観たらいいと思う

2020年3月24日
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鑑賞方法:映画館

劇場で久しぶりに2桁観客数だ。それも200席程度のスクリーンで。さすがに俺みたいなおっさんばかりだけれど。
TOHOシネマなので、事前CMは「フリーガイ」や「モンハン」だったりと、同じドキュメンタリーを観るにしても、やはり渋谷イメージフォーラムや東中野ポレポレでとは、ずいぶん雰囲気が違う。

本作は、面白くはないし、言ってることは難しいしだけれど、TOHOシネマで本作が公開されているということは、全国津々浦々で観られるということ。これは、実はすごいことだと思う。コロナ禍の中で言いにくいが、可能になったら、みなさんが観る機会があったらいいな、と思う。

さて本作だが、自分は、1960年生まれで時代的に学生運動とかすかに重なっているので、観た。三島氏が、自衛隊市ヶ谷で割腹自殺したのは1970年、俺は10歳。その前々年1968年に、学生運動の実力行使の最後の砦ともいえた安田講堂が陥落している。本作で描かれている討論は、実力行使に敗れた学生(のうち全共闘)が、活動をこのまま終わらせてはいけない、という思いから、当時の人気文学者である三島氏と自分たちとの対談を企画したものだということを初めて知った。
大学構内にまだ各セクトの横長立て看板がいくつも立っていた1978年に、自分は大学生になり、その年、学生運動の名残ともいえる風景を目の前で二つ見た。ひとつは入学したての春、大教室でなかなか授業が始まらず、代りに、あるセクトの演説が始まったシーン。もうひとつは、秋の学園祭で、俺たちの模擬店の前を、頭から血を流した学生が転げるように走っていき、「なんだ、なんだ?」と驚いているところへ、学生が数人、当時 "ゲバ棒" と呼ばれていた角材を手にし、「待て!この野郎」と追いかけて行った、というシーン。まさに「学生運動とその内部抗争」なわけだが、ただ、俺が見たのはその2つだけだったので、 "名残" だったのだろう。その後の学内は、学生運動よりも、"統一教会"(サークル名 "原理研究会")と "歎異抄研究会" の対決に移っていったように記憶している。
まあ、学生運動は、俺がこの程度しか書けないように、78年の学生からは、すでに離れていた。自分は、民青と全共闘の違いも知らなかったのだ。

映画はドキュメンタリーで、その中身は討論なので、面白いはずはない。かつ、三島氏も全共闘も言うことが難しい。というわけで人にお薦めする映画かと言われたら難しい。しかし、冒頭に書いたように、みなさんが観る機会があったら嬉しいなとも思う。

こんな感じだ。
三島氏「エロティックと暴力は根源でつながる。エロティックは、相手を拘束し自由が利かない状況にすると感じる。自分が考える暴力も、相手の自由意思を奪って行われるもの。相手に意思を認めた上で振るわれる暴力は、自分が考える暴力ではない」
さらに、"解放区" に関する芥氏との討論は、もはやわからなすぎて、ここに何も書けない。

当時44歳の三島氏と、21-23歳の全共闘の学生の討論だが、三島氏は「討論しよう、話し合おう」という姿勢であること、学生側は、さすがに若いので、「三島氏を言い負かしてやろう、ぎゃふんと言わせてやろう」という姿勢が見受けられる。とは言え、両者はたしかに "討論" をしている。その姿を観ることは価値があるように思う。

討論以外に印象的だったことをひとつふたつ書く。まず、芸術家と自分の遥かなる隔たりを、全共闘の芥さんの言動にみた。全共闘の中でも際立っていた彼が話した内容はちんぷんかんぷんな部分が多かったが、「何もない中で語るとしたら、どう語るか。モノもない世界であなたは何を話すのか」という芥さんの問いかけは、前衛芸術家は、そんなことまで考えているのか。彼らの言う「魂の叫び」は、俺たちが考えるその言葉とははるかにかけ離れたものなんだな」と知った。自分は、"社会性" は生物の本能のひとつとも思っているのだが、そうとは限らないのかもしれない。ここまで「自分ひとりだったら」と考える人たちもいるのだというのは驚きだった。俺は、一生、彼らとは交じり合わないかもしれない。そのせいか、現代の芥さんが語る「憎むべきは、あやふやで猥雑な、この日本国」という言葉については、その真意がまだわからないままだ。

また、"三島氏を論じる文化人" の立場で登場する三人、内田さん、平野さん、小熊さんには、「世の中にはこんなに頭がよい人がいるんだなあ」と感心させられた。ここで言う頭がよいとは、三島由紀夫や全共闘が対話で語った言葉を、「こんな意味で言ったのだと思う」と俺たちにもわかるように解説する能力、という意味で書いてます。三島由紀夫が言った「あなたたち(全共闘)の行動を、天皇の名において、やれ」とは、どういう意味なのかを、説明できるって、すごい。「左翼と右翼は本質的な区分になっていない。両者は "反米愛国" という点で一致しているから接点があるという意味です」という説明もすごい。

終盤で語られる「三島氏(と同時代の人々)は、"国運と個人の命運が完全に一体" となっていた」という解説も、腑に落ちた。三島氏が言う「私は日本人なんだ。そこを越えていく必要は感じないんだ」という言葉は三島氏だから語れることであって、いまの時代の俺たちが安易に「そうだ、そうだ」と相乗りできるものではない、ということだ。日本、国、国家という、人間にとっての領域というか境目は、必要悪であって絶対的なものではない、と俺は、実は、初めて知った。そういうものがなくてもすめば、つまり、人類がすべてひとつになれれば、その方がいいんだね。

本作のナレーション、「彼らの"熱" と "敬意" と "言葉" は忘れるな」はその通りだと思う。語られていたことではなく、熱をもって臨むこと、(相手に) 経緯をもつこと、言葉 (は必ず伝わる) と信じること、この3つは、せめて忘れないようにしよう。

追記
三島氏が自衛隊で乗ったというF14戦闘機。自分は小学生か中学生の頃に、この機種のプラモデルを作った記憶がある。愛称は "スターファイター" 。ただの昔話。

CB
ぷにゃぷにゃさんのコメント
2021年8月2日

私、公開3日めの「イン・ザ・ハイツ」で、観客たった3人でしたよ。なんでや。

ぷにゃぷにゃ
CBさんのコメント
2020年4月19日

温かいコメント、ありがとうございました

CB
asicaさんのコメント
2020年4月18日

本を読んだ事がありますが、この映画も見られる時期が来たら見るべき(楽しみとは言えませんが笑笑)だと思っております。
とても素敵なレビューでございました。

asica
asicaさんのコメント
2020年4月18日

こんばんは。コメントありがとうございました。
とても優しい口調だったので女の方だと思ったらほぼ同年代の男性の方だったんですね。
私も名残世代で、大学入学後に先輩方が我々の入学金値上げを 有り難くも学校側に抗議したと聞きびっくりしたり。
そして そう!原理ですよ。助教か講師か忘れましたが学生を取り込んでて、卒業後に「あれだわ!」って気付いたり。宗教勧誘ビデオも多かったです。三島さんが切腹した時に介錯した森田って人の

asica
CBさんのコメント
2020年3月29日

talismanさんにそんなこと言われると、嬉しくなっちゃうじゃないですか(嬉)

CB
talismanさんのコメント
2020年3月29日

とてもいいレビュー、ありがとうございます。

talisman