「初めての映像」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 せんさんの映画レビュー(感想・評価)
初めての映像
この頃僕は幼少期で、それでも全共闘とか三島とか覚えているのはやはりテレビ放送というのがいかに影響を与えたかという証拠。
三島というと自衛隊で自決というセンセーショナルな事件が取りざたされるが、それに至る三島の行動、言動は、未だに研究されている。
三島はその当時色々な大学で学生相手の討論会を開き、その学生と正面に向き合っていた。この駒場での全共闘1000人を前に、一つも臆することのない姿勢は清々しく、まずあいさつ代わりのスピーチを始めた三島に、1000人はアジることなく黙って聞いている。僕の感想だが、三島が圧倒的に大人で、丁寧に話し、嫌いなものをはっきりとさせていき、ユーモアがあることで戦闘モードの学生も沈静化したのだと思う。
司会を務めた木村という学生も、思わず三島先生とうっかり呼んでしまうほど、実際学生の心はこの最初のスピーチで掴まれてしまっていたような気がする。
もちろん途中全共闘一の論客と称えられていた芥氏が赤ん坊を連れて三島さんは敗退してしまった!とするどい一撃を浴びせるが、三島は最後まで声を荒げることなく主張をする。
このフィルムの面白さは、当時のフィルムに載せて、現在の彼らの考え、当時の思いをインタビューしたことだ。現在の芥氏は大人の不敵さで、「天皇の文化的側面ってなんだい?」とインタビュアーに聞き返す。むしろそちらの方の緊張感もあった。
三島は最後には共闘することはないが、皆さんの熱情が今ここにあることは信じられるという。この両極端の思想の両者には敬意がある。三島が発した言葉が、言霊となり駒場の900番教室に今でも残っているに違いない。
50年後の現代に、SNSで一方的に浴びせることはもう議論でもなんでもなく、シンプルに言葉を交換することで何かを生み出す。この映像はそれを我々に見事に示してくれたのだと思う。