劇場公開日 2020年3月20日

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「稀代のパフォーマーによる見栄の張り合いとしての討論会。」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5稀代のパフォーマーによる見栄の張り合いとしての討論会。

2020年3月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作を鑑賞すると、三島由紀夫と全共闘の学生達の討論会が、東京大学の講堂を舞台にした二人(二群)の演者によるパフォーマンス対決という色彩が強いことが理解できます。

そのことを最も強く印象づけているのは、映画のポスターや本編のインサートカットで使用されている写真です。それらはどれも構図や表情が完璧で、まるで入念にリハーサルを経たかのようです。

それも当然のことで、実は三島は、この討論会を宣伝材料として利用することを事前に計画しており、昵懇の記者を同行させて、記録撮影をさせていました。

三島はカメラがどの位置にあり、どのような振る舞いをすれば「写真映え」するのか、討論しつつ十分に計算していたのです。報道記者として状況を客観的に記録していたはずなのに、いつの間にか三島に「撮らされていた」という記者自身の証言が非常に印象的です。

 対する全共闘の側も、三島に負けず劣らずパフォーマンスを仕込んでいます。映像に映し出された、子供を抱きかかえて議論を挑む男性学生の姿は一種異様な印象を残しますが、これは大学内での知識人同士の討論という、知識を巡る権力闘争となり得る状況を敢えて破壊するための仕込みでした。こうした手練れの役者同士の演技合戦と観念的な議論が交錯して議論は展開ていきます。

全編にわたってとりわけ強い印象を残したのは、今も舞台の世界に生きる全共闘の元闘士の鋭い眼光ですが、彼は現在、一体何と闘っているのでしょうか?

yui