「【アンサンブル】」ぶあいそうな手紙 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【アンサンブル】
この作品には、
老いたエルネストと若いビアを中心に、さまざまな対比が織り込まれている。
手書きの手紙と、タイプライターの手紙、
形式に拘った表現と、率直な言葉遣い、
スマホの動画のどこかぎこちない話し方と、語りかけるような口調、
視力の衰えたエルネストと、聴力の衰えたハビエル、
長年想い続けたのに気持ちを押さえ込もうとするエルネストと、常に誰かを求めてしまうビア。
そして、途中の場面。
夜の街で詩を大声で交わし合う若者達を見ると、どこか普通と異なるように感じられて、これも対比のようなものではないかと思ったりする。
しかし、こうして語られる対比の物語が絶妙に絡み合って、まるで調和してアンサンブルのように感じ始める。
そう、対比とは言っても対立するものではないのだ。
僕達は、いつの間にか、古いとか新しいとか、あっちとこっちとか、分けて考えることに慣れすぎているのではないか。
どこかに壁を作ってはいないか。
エルネストがお金を取られるのを覚悟でやったことと、ビアが返金する行為。
そして、ここから、二人の気持ちはお互いに向き合い始める。
最後、エルネストは自分の気持ちに素直に従おうと思い立ち旅立つ。
ビアは誰かに依存することなくやっていこうと決心をする。
この旅立ちで、この映画の物語はいったん終わりになるが、また、別に奏でられる物語が続くのだと、多くの人に思わせる。
一歩踏み出す素敵なストーリーだと思う。
コメントする