「絶対 mid90s とあわせて観るべき一本(傑作)」行き止まりの世界に生まれて カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
絶対 mid90s とあわせて観るべき一本(傑作)
イリノイ州ロックフォードの実在する仲良しスケボー少年3人のドキュメント映画。しかも、そのうちの一人のビンが12年間に撮り貯めたビデオ映像を編集して監督として世に出したもの。
3人は白人のザック、黒人のキアー、そして中国系アメリカ人のビン。
地域的な背景にはラストベルト(五大湖周辺の錆び付いた工業ベルト地帯)がある。ビンの家庭環境は実の母親のインタビュー映像のなかで語られる。継父や異父兄弟からのビンへの虐待に対する母親の懺悔はこの映画のラスト近くの山場。ビンの母親は三度目の結婚を最近したらしい。キアーの家庭は離婚はしていないものの、別居し、父親に引き取られたキアーは厳しい父親と会わず家出する。その後父親が死亡し、母親のもとで同居するが、小さい弟がたくさんいる。さらに母親には新しい恋人ができてさらに弟が増える。しかし、キアーは明るい屈託のない性格からか、真面目に働き家計を助ける。キアーはそんななかでも、スケボーは続けていた。ザックはなかなかイケメンで、両親が揃っているが、出来ちゃった婚をする。妻ニナとの育児分担のストレスやインドアスケボー場の共同経営者が借金の支払いをせず、売上金を持ってトンヅラしてしまい、妻へDVをやってしまう。若妻の養育環境も殺伐としたものであったらしく、ザックの両親との関係は悪くないが、ザックはコロラド州デンバーに単身出稼ぎにいく。そこで女と出来てしまい、子供に会えない寂しさと罪悪感からますます酒量が増える。これらの複雑な事情をビンは丁寧なインタビューや実際の映像で描いていく。ザックやキアーはビンのために、本当は隠したいであろう事情をさらしてくれる。よほどの信頼感がなければ無理だろう。同時に3人はそれぞれ自分を吐露することで、自分を見直したり、親を赦し、傷ついた自分を癒すきっかけを得る。もちろん、観ている我々も辛い事情を見せつけられることにもなるが、小さい頃のスケボー少年の屈託のない笑顔やビンの優しく慈愛に満ちた眼差しを通して、まぎれもない現実を見ることができる。貧しい白人、黒人、移民の中国人の3人の少年の友情の裏にはそれぞれが抱えていた家庭や学校での居場所のなさから、「別の家族」を作る必要があったと、ビンは語るのだ。
アカデミー賞長編ドキュメント部門ノミネートの他、多数の映画祭で受賞している。この映画は制作にあたり、制作会社や配給会社が決まるまでには相当年月を要しただろう。2018年に発表されているが、同じく、2018年の作品の mid90s はあまりにも内容が似ており、うまくパクられちゃったに違いない。やはり、アメリカ社会は厳しい。資本がものをいう世界。
誰だって、小さい頃、やるせない毎日だったら、何かで現実逃避する方がむしろ健全だと思う。スケボー買えるぐらいの余裕があってよかった。
> 2018年の作品の mid90s はあまりにも内容が似ており、うまくパクられちゃったに違いない
へええ、それは観てみないとなりませんね。ありがとうございます